「都構想」否決へ導いたSNSの動き ──<誰が「大阪市」を守ったか2>

都構想実現を訴える吉村・松井

都構想実現を訴える吉村・松井の両氏。メディア露出効果か、街頭の人気では勝っていたが…

「ふわっとした民意」からの卒業

 大阪市廃止・特別区設置の住民投票で、いわゆる「都構想」が否決されて最初の週末、梅田の居酒屋に30~40歳代の男女7人が集まった。ほとんどが初対面だが、お互いのことはTwitterのアカウント名で認識している。都構想批判や維新政治の検証を行い、SNS上で発信してきた市民のオフ会である。  職業を聞けば、会社員、飲食店経営者、デザイナー、主婦など。居住地は、阿倍野、天王寺、生野、住吉、都島の大阪市内各区に、市外の府民もいる。大阪市の存続決定を喜び合い、杯を交わしたのも束の間、話題は、これからも当分続く維新体制の問題へと向かった。  たとえば、住民投票の結果を無視して府への広域行政一元化と総合区制度を強引に進める条例案。市の広報で都構想のメリットばかりを強調しながら、基準財政需要額試算のような自らに都合の悪い報道を「捏造」と決めつけて攻撃する情報コントロール。市民の共有財産である公園や公共施設を「民間委託」という名目で特定企業の収益に変える手法。そして、マスメディアでは持て囃されたものの、イメージばかりで実態が伴わず、感染拡大を抑え込めていない新型コロナ対策……。  興味深いのは、彼らはもともと強固な「反維新」では必ずしもなかったことだ。党派性や政治的主張を強く持っているわけではない、いわゆる無党派。むしろ、以前は橋下徹氏が語ったような「ふわっとした民意」の一人だったと、自覚的に語る人もいる。 「わたしは橋下さんが何か変えてくれるんじゃないかと、すごく期待していました。父が強力な自民党支持者なので、よくぶつかった。だけど、結婚して子供ができ、育児をするうちに政治を見る目が変わりました。子育て支援や保健医療にしても、大阪市が政令指定都市だからできる行政サービスがあり、そのための財源もある。都構想でそれがなくなるのは違うよね、と」  そう語る女性に前回2015年の住民投票のことを聞くと、「実は、投票に行ったかどうかも覚えてなくて」と苦笑した。

自ら調べ、気づいた市民が反対した

 別の出席者の男性は前回、賛成に投票したという。「大阪がよくなる、変えてくれるというならええやんと思って、ふらっと賛成に入れてしまいました」と言い、「恥ずかしいですけど、当時はあまり政治に興味がなくて……」と付け加えた。彼も、この5年間に2人の子供ができ、市民として身近な行政に目を配るようになったという。維新は子育て施策に手厚く、その世代に支持者が多いと言われるが、少なくともここに集まった面々はそうではない。  都構想否決後、「大阪市民は変化を好まない」「市がなくなることへの漠然とした不安」「単なるノスタルジー」などと語る維新議員やコメンテーターがいたが、彼らの話を聞く限り、そんな理由ではない。メディアを通じて「何か変えてくれる」「大阪が成長する」と漠然としたイメージ宣伝が繰り返されてきた都構想や維新政治の実態を自ら調べ、正確に理解したからこそ、明確に反対の意思を表明したのである。  こうして「気づいた」人たちが、個々に粘り強く情報発信を続けてきたことで、Twitter上では、都構想反対の声が告示後、日を追って大きくなっていった。投開票2日前の10月30日には、「#大阪市廃止を否決しよう」「大阪市4分割コスト試算」「市財政局」などのキーワードが、近畿や日本のトレンドに並んだ。SNS世論と実際の世論は必ずしも一致しないが、今回について言えば、中盤までの劣勢を覆し、否決の流れを作る重要な一要因になったのではないだろうか。
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公文書で検証する「開示請求クラスタ」の戦い
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