維新と安倍・菅政権の「報道の潰し方」<ノンフィクションライター・西岡研介氏>

維新の広報機関と化した在阪民放

―― 権力の問題だけではなく、メディアの問題も大きい。 西岡: ここまで維新をのさばらせたのは、維新に肩入れしてきた在阪民放の責任です。2010年に大阪維新が結成されてから現在に至るまで、在阪民放は維新の広報機関と化していました。民放各局は橋下徹ら維新関係者を重宝していて、特に新型コロナウイルス対策で全国的に有名になった大阪の吉村洋文知事はテレビに引っ張りだこ。結局、在阪民放は大阪都構想の問題点をろくに検証しないまま、維新の主張を垂れ流してきたのです。新聞各紙も、先に述べた大阪毎日以外は維新にベッタリでした。  その背景には、在阪メディアのコンプレックスがあります。第一に、表向きは「東京がなんぼのもんじゃい」と言っているくせに、内心は「東京と肩を並べる副首都になりたい」と思っているという、一定数の大阪人が「東京」に対して抱いている屈折した感情がある。第二に、在阪各紙には政治部がないため、「維新のネタで手柄を立てて東京の政治部に移りたい」という出世欲がある。  第三に、これは大阪に限らず、民放では報道局のほうが制作局より立場が上なんですが、在阪民放では特にその傾向が強い。維新発足後は、橋下氏や吉村氏が頻繁に情報番組やバラエティーに出たことから、制作側は「報道でも呼べない大物を俺たちは呼べるんや」と、報道側に対するルサンチマンに基づいた、歪んだ優越感を持っている。これら複数のコンプレックスが絡み合って問題をややこしくしているのです。  維新が登場するまで新聞の政治面はほぼ東京、永田町の話ばかりだった。ところが登場後は、大阪政界の記事が載るようになった。それは、テレビのニュースや情報番組でも同様です。そこから新聞記者は、維新のネタで全国的なスクープを上げて東京の政治部に行くために維新のフトコロに飛び込み、在阪民放の情報番組やバラエティーは、〝数字がとれるタレント〟として、また報道への対抗意識から、こぞって橋下氏や吉村知事を出演させた。その結果、在阪メディアは総じて維新とベッタリになってしまったのです。大阪はメディアの劣化を象徴している。

3度目の「大阪都構想」を出してきた維新

―― 松井市長と吉村知事は大阪都構想の否決から1週間足らずで、府と市の広域行政を一元化する条例の制定を目指す考えを示しました。 西岡: 「それって、大阪都構想ちゃいますのん?」ということです。そもそも維新の狙いは、政令指定都市である大阪市を解体して、その権限と財源を大阪府が取り上げることです。そうすれば、維新出身の府知事が全大阪を意のままにできる。そのための策略が大阪都構想なのです。  しかしそんな本音は言えないので、表向きの理由としては「二重行政を無くす」と説明してきたわけです。在阪メディアもそれに沿って報道するから、皆いまだに大阪に「二重行政」があると勘違いしているんですが、少なくとも維新が大阪府知事と大阪市長を押さえて以降、二重行政など存在していないのです。  結局、こういう詐欺的なプロパガンダは通用せず、大阪都構想の住民投票は2回にわたって否決された。それでも諦めがつかず、「大阪都構想」の看板だけ下ろして、実質的に大阪市の権限と財源を取り上げる府政と市政の一元化条例案を出してきたということです。これは事実上3度目の「大阪都構想」であり、もう一度潰さなければならない。  一連の維新の動きには、さすがの在阪メディアも批判的です。メディアは10月27日の松井市長の会見や29日の財政局長の会見ではガンガンやり合っていました。特に維新ベッタリだった大阪朝日新聞もさすがに、11月11日には「否決直後に都構想『簡易版』? 維新の新制度検討が波紋」と疑問を呈しています。  恫喝政治や恐怖政治は人間の良心に反するものです。一時的に上手くいっても、それが長続きすることはない。維新や安倍・菅の恫喝政治は終わりが近づいていると思います。メディアからも反撃の狼煙が上がり始めている。大切なのは「ファクトに基づいた批判」を地道に続けていくことだと思います。 (聞き手・構成 杉原悠人) <記事提供/月刊日本12月号> にしおかけんすけ● ノンフィクションライター。1967年、大阪市生まれ。91年に神戸新聞社へ入社。社会部記者として、阪神・淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。 98年に『噂の眞相』編集部に移籍。則定衛東京高等検察庁検事長のスキャンダル、森喜朗内閣総理大臣(当時)の買春検挙歴報道などをスクープ。2年連続で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞を受賞した。その後、『週刊文春』『週刊現代』記者を経て現在はフリーランスの取材記者
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2020年12月号

【特集1】「権力との対決」こそメディアの使命

【特集2】大統領選挙 混迷を極める米国

【特集3】種苗法改正が農業を破壊する




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