除菌液の有用性(有効性と安全性)の問題ではなく、企業倫理の問題
現在、各レストラン営業中の店舗内で除菌液がミスト噴霧されていることを利用客が知る術はない。店頭及びすかいらーくグループ公式サイトにも一切その旨が明示されておらず、以前のように加湿器に何もラベルシールが貼られていない現状では、噴霧されているものが「ただの水」ではないことを知りようがないからだ。
コロナ禍の社会においてユーザーが利用するレストランを選択する際、その店がどのような感染症対策を採っているかが判断材料の一つになる。最低限必要な情報を明示しないまま、利用客に“無断”で除菌ミストを浴びせている現状は、看過できるものではない。
“除菌液”アピノンエアーの有用性(有効性と安全性)や“空間除菌”自体の問題についてはメーカーの見解を含めて前述の既報記事で検証しているが、今回も問われているのはすかいらーく側の姿勢だ。
各レストラン店頭に除菌ミスト噴霧についての表示・説明は皆無だ(以上、掲載写真は全て筆者が都内すかいらーく系レストランで撮影したもの)
すかいらーくグループを統括するすかいらーくホールディングス(HD)の広報室に質問をメール送信した。質問事項は以下の10項目。
1.夏場にアピノンエアーによるミスト噴霧を行っていた加湿器を一旦撤去された理由及び11月2日から再度設置された理由を教えてください
2.現在、すかいらーく各店舗で加湿器から噴霧されているのは水ですか?それとも以前と同じくアピノンエアーですか
3.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、以前と違い、加湿器本体表面に何も表示していない理由は何でしょうか
4.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、店舗等で提示しておられる新型コロナウイルス対策としての取り組みの中に加湿器による空間除菌の項目をしていないのはなぜですか
5.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、実際に薬剤を噴霧していることを利用客に明示していない理由を教えてください
6.店舗に対し、「利用客からの問い合わせには『加湿しています』『噴霧しているのは水です』と答えてください」等の旨の通達をされた事実はありますか
7.ある店舗ではラベルシールが剥がされていることについて「貼ってあったが、取るように指示があって」と答えています。すかいらーくグループとして各店舗に加湿器からラベルシールを剥がすよう指示はされましたか? 指示をされた場合、なぜそのような指示を出されたのか教えてください
8.新型コロナウイルス禍においては、レストラン利用客にとって店舗がどのような感染症対策を取っているかが利用店舗選択に際し重要な要素となっています。ラベルシールが貼られていない加湿器から何が噴霧されているのか、利用客に明示・説明されていない現状についてどのように捉えてらっしゃいますか
9.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、現状としてHP・店頭・店内等で掲示されておられる新型コロナウイルス対策の項目にアピノンエアーによる空間除菌の再開は明記されていませんが、今後、明記される予定はありますか
10.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、利用客にその旨を伝えていない現状について、どのように思われますか。企業の社会的責任の観点からお答えください
「GoToEatプレミアム付食事券」キャンペーンの一方で説明責任は
期限までにすかいらーくHDから回答はなかった。回答が得られなかったことから、アピノンエアーの空間噴霧再開が何を目的としているのか、そしてラベルシール剥がしや除菌液噴霧を秘匿するかのような従業員への指示が出された経緯や事実関係も依然として不明なままだ。
アピノンエアーの有用性が担保されているとすかいらーく側が判断しているのであれば、店頭及び公式サイトでその旨を明示した上でミスト噴霧を行うべきである。利用客はその情報を見た上で、店舗を利用するか否かを判断できるからだ。
折しも「GoToEatキャンペーン プレミアム付食事券」が全ブランドで使用可能となり、開始日程を調整中の山梨県の店舗を除く46都道府県での利用が開始されているすかいらーくグループ(山形県は11月26日、青森県は12月1日から開始)。
新型コロナウイルスの感染が再拡大し第3波の到来が指摘される中、“食”を扱う企業として真摯な説明が求められる。
〈参照:
すかいらーくグループ公式サイト|Go To Eatキャンペーン お食事券〉
<取材・文・写真/鈴木エイト(ジャーナリスト)>