沈没事故から1年後の2018年、真相究明を求める遺族の姿。彼らのためにも真相究明が急がれる
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2017年11月15日、アルゼンチンの潜水艦ARAサンフアンが消息を絶つという出来事は世界の注目を集めた。ARAサンフアンの残骸が見つかったのは、1年が経過した2018年11月16日未明のこと。米国の探索船オーシャン・インフィニティーがアルゼンチンから500キロ離れた沖合の水深907メートルの海底でその残骸を発見したのだ。
現在その残骸はサテライトを利用して現存の状態を保つべくモニターコントロールを行っているという。海底に沈んでいるその残骸の散乱した状態の3Dモデルを
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そして、消息を絶ってから3年が経過した2020年の11月7日から8日にかけて、アルゼンチンのメディアでARAサンフアンのことがまた注目を集めることになった。
この事件の解明に向けて現在公判がアルゼンチン南部地方のコモドロ・リバダビアで行われているが、11月7日に、アルゼンチン海軍の副提督で海軍の元指揮官エンリケ・ロペス・マツェオが爆弾証言をしたのである。それは、ARAサンフアンが消息を絶ってから20日目には沈没した場所が海軍では分かっていたという内容であった。もしこれが事実であるなら、消息を絶ってからその残骸が見つかるまで1年を要したというのは無駄な時を過ごしたことになり、その探索費用750万ドルも使う必要はなかったということになる。またそうであれば、海軍上層部並びに当時のアルゼンチン政府の間でそれを故意に隠ぺいしていたということになる。
彼が公判で証言した内容は以下の通りである。
「皆さんがすべての書類を見れば分かることであるが、潜水艦の探索そして救出作業を取りやめることを指示する書面に私が署名をせねばならなくなった時の心境は私にとってこれまで軍人として最も胸の痛むものであった。というのも潜水艦の位置は分かっていた。それ故に英国海軍と(2017年)12月5日に協力して無人潜水艇の提供を要請した。というのも、二つの渓谷の間にあることが分かっていたからだ。ただ、手元にある国際的に義務付けられている手段ではその詳細を確認することができなかったからだ」
この証言は、アルゼンチンの主要各紙全てが報じることとなった。
ARAサンフアンが消息を絶った3年前の11月15日から20日後にはそれがどこに沈んでいるか少なくとも海軍でこの事件に関係していた幹部は知っていたということなのである。チリの軍艦カボ・デ・オルノスの指揮官が彼らにそれを知らせて来たからだというのである。
ところが、
地元紙『página12』の11月8日付によると、2017年12月5日にこの事件で報道官を務めていた海軍キャプテンのエンリケ・バルビは、940メートルの海底に全長30メートルの物体を見つけたとチリの軍艦から報告があったことを指摘したという。ではなぜ海軍ではそれを無視したのかというと、ARAサンフアンの全長は60メートルだからだそうだ。ところが、探索船オーシャン・インフィニティーが1年後にそれを発見した時、ARAサンフアンの全長は33メートルということだった。一部が破損してバラバラに周囲に散乱して潜水艦の本体の全長は33メートルになっていたということなのである。
エンリケ・ロペス・マツェオ副提督が憤慨しているのは、12月5日の時点で英国海軍も協力するからということで無人潜水艇の要請したことに対し、海軍のトップあるいは政府の大統領か国防相がその要請を却下したということにある。そこにはその発見を遅らせる、あるいはそれを永久に葬り去ろうとするのを望んでいた個人的利害が関与したとマツェオ副提督は見ているのである。遺族のことを考えるとそれは許されるべきことではない。だから彼は、12月5日の時点でARAサンフアンが沈んでいる場所が明らかされていたことを公判で初めて公にしたのである。
この発言がきっかけとなり、電子紙『
Infobae』でも報じているように、遺族の弁護団は11月11日、マクリ前大統領、アグアッ前国防相祖そして海軍最高司令官だったスルル大将らを潜水艦の沈没についての情報を隠蔽していたことなどを理由に提訴したのである。