メキシコ前大統領、ペーニャ・ニエトがアメリカ行きを恐れるワケ
メキシコのサルバドル・シエンフエゴス前国防相が米国ロサンゼルス空港で10月15日に逮捕されたことで、その行方を一番不安をもって観ているのは
エンリケ・ペーニャ・ニエト前大統領だ。彼はもう絶対にプライベートに米国を訪問しない方針のようだ。
というのも、アルゼンチン電子紙『
Infobae』が10月16日付でそれを次のように指摘しているからだ。
ニューヨークタイムズ紙の記者ヨアン・グリロが米国麻薬取締局(DEA)の元局員マイク・ヴィジルと会見した際、DEA元局員がグリロ記者に米国の検察はシエンフエゴスと交渉して彼がエンリケ・ペーニャ・ニエト前大統領の犯罪を明らかにする証人となるように説得したい意向だということを伝えたというのである。
実際、シエンフエゴスが国防相に任命されたときからペーニャ・ニエト前大統領には
汚職の噂があった。勿論、証人となれば、その交換条件として検察が彼に約束するのは刑の軽減である。麻薬取引と資金洗浄などでシエンフエゴスが犯した犯罪だと、公判で30年あるいは終身刑が言い渡されるは確実だからである。
シエンフエゴスがペーニャ・ニエト前大統領の政権で6年間国防相の任についていたということからして、ペーニャ・ニエト前大統領が麻薬組織カルテルと関係をもっていたということを裏付けるための十分な証拠をシエンフエゴスはもっているはずだと検察は踏んでいる。その意味で、今回の逮捕は米国の検察にとって極めて重要人物だと判断しているようだ。
更に同紙は、
麻薬王エル・チャポことホアキン・グスマンを裁いた昨年の公判で、カルテル・シナロアのヘェスス・サンバダ(通称エル・レイ)とコロンビア人でシナロアの協力者であるアレックス・シフエンテスは、
3人の大統領がシナロアと関係を持っていたことを明らかにしたことも指摘している。
この3人の大統領というのは
ビセンテ・フォックス(2000-2006)、フェリペ・カルデロン(2006-2012)、エンリケ・ペーニャ・ニエト(2012-2018)の3人である。彼らが何百万ドルという高額資金をシナロアから受け取っていたことをこの二人が公判で供述したというのだ。
大統領にシナロアを保護してもらい、シナロアの敵を挫く一方で、シナロアは敵のカルテルの情報を大統領サイドに逐一流していたのだという。それでシナロアは一躍飛躍して、エル・チャポは麻薬王と呼ばれるようになった。
更に同紙は、その公判でアレックス・シフエンテスが
ペーニャ・ニエト前大統領がシナロアとコンタクトし、シナロアから1億ドルを受け取ったことも明らかにした。当初、ペーニャ・ニエトはシナロアが自由に行動できるようするという便宜を図る代わりに2億5000万ドルを要求していたという。が、最終的に彼は1億ドルで了承したようだ。
エル・チャポのニューヨークでの弁護士ジェフリー・リッチマンもペーニャ・ニエトとフェリペ・カルデロンはシナロアから高額の賄賂を受け取っていたことを公判で述べている。更に、メキシコでのエル・チャポの弁護士ホセ・ルイス・ゴンサレス・メサはリッチマンの発言を補うかのように、ペーニャ・ニエトが大統領に就任した2012年から18億ドルをシナロアから受け取っていると確言したことという。