アクセス解析が困難に? 流入元URL情報制限の動き

「リファラ」の情報で何がわかるのか?

 たとえば、「https://google.com/search?q=hbol」のようなURLからやって来たという情報が得られれば、「Googleで検索してやって来たのだな」「検索キーワードはhbolだな」ということが分かる。  また「https://www.fusosha.co.jp/magazine/spa/」というURLからやって来たという情報が得られれば、「扶桑社の、雑誌の、『SPA!』のページから来たんだな」ということが分かる。  また、リファラがないと、ブックマークから直接来たんだなということも分かる。この場合は、ノーリファラと呼んだりする。  ただ、ノーリファラの場合は、必ずしもブックマークからとは限らない。アドレス欄から直接来た場合もあるし、Webブラウザの設定で、リファラを送らないようにしている場合もある。  Webブラウザ以外の方法でアクセスする際に、リファラを送らないケースも考えられる。また、SSLで暗号化されているページから、暗号化されていないページに移動する際にも、リファラの情報は削られる。  Webサイトの運営者はリファラを使い、流入元を調べることで、どこから、どれぐらいの人がやって来たのかが分かる。そうすれば、「アニメ関係のキーワードで検索してやって来る人が多いから、作品ごとの分かりやすいまとめリンクを用意しておくか」といった対策ができる。  また「この雑誌の記事は、ファッション関係のブログでよく引用されている、じゃあファッション系の記事を少し増やすか」といった方針を立てることができる。商品のWebページであれば、「このお菓子、コスプレサイトでよく取り上げられているな、小物として使っている人が多いのか」といった、利用のされ方が分かったりもする。  Webサイトを運営する上で、リファラの情報は、非常に重要だ。SNSなどでバズったときに、どういった取り上げられ方をしたのか把握するのにも有効だ。メディアを運営する上でも重要だし、商品を販売する上でも大切だ。  こうした詳細な情報が得られていたリファラなのだが、Webブラウザのセキュリティ強化により、「https://google.com/search?q=hbol」のURLのうち「https://google.com/」の部分のみしか分からないように、移行が始まっている。どこのサイトから来たかは分かるが、どこのページから来たかは分からなくなってきているのだ。  こうなると、どうなるかと言うと「Facebookから急に人が来たのは分かるけど、なんで来たのか分からない」「アメブロから大量に人が来たんだけど、どのページなのか分からない」といった状況が生じる。  最近は、ネットの情報発信の多くが、大手のSNSに集約されている。そのため、どのSNSから来たのかは分かるけど、具体的にどこからなのか分からない、という状況はかなりの痛手だ。各ページから、どれぐらいの人が来たのか、その比率が全然分からないといったことになる。  メディアやマーケティング担当者としては、これまで細かく見ることができていた情報が見られなくなり、計画を立てにくくなる。地味に死活問題だったりする。

プライバシーが解析されていた世界

 Webサイト運営者にとってリファラは、非常に強力な情報源だった。しかし、リファラの情報と、サイトにログインしたユーザーの情報を組み合わせると、誰が直前にどんなWebページを見ていたのか知ることができてしまうという問題がある。こうした情報を蓄積すれば、普段、どういった情報を見ているのか丸見えになってしまう。  プライバシー重視の近年の流れから、ちょっとまずそうだなというのは想像が付く。趣味嗜好だけでなく、思想信条まで解析される可能性があるからだ。いわば、図書館の貸し出しリストを、第三者が閲覧できる状態なわけだ。  そのため、情報をサイトの運営者に渡さないように配慮するという流れは、仕方がないだろうなと納得できる。便利なものは、悪用する側にとっても便利だからだ。  インターネットは、利用者の少ない牧歌的な世界から始まって、今では多くの人のインフラと言っても過言ではない状態に成長した。そのため特別な知識がなくても、誰もが安全に安心して使える状態が望まれている。  今回のケースだけでなく、ネット上のプライバシーを得る技術は、今後も少しずつ利用が制限されていくことが予想できる。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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