安倍内閣同様、菅内閣でも統一教会に次ぐ勢力を誇るのが「
不二阿祖山太神宮」(山梨県富士吉田市)。偽の古文書「宮下文書」を根拠として、200~300万年前の富士山麓(富士高天原)に天皇を頂点とする「富士王朝」(古代富士王朝)があったとし、その文明において天皇家縁の神社だった「不二阿祖山太神宮」の再建を目指している。
人類の誕生は約100万年前。200~300万年前と言えば、猿人・アウストラロピテクスの時代だ。古事記も日本書紀もあったものではない。
またこの宗教団体の設立は2009年。200~300万年前の「富士王朝」とは関係がない。
「病気が治る奇跡の水」なるものを販売していた過去もある。
政治との関連で問題なのが、関連NPO法人の名義で年1回開催している「
FUJISAN地球フェスタWA」。学研『ムー』編集長を講師に招き「富士高天原ツアー」や「富士王朝」に関する講演会を開催するなど、教義に結びつけるような企画を含んでいた年もある。
このイベントの初期に
「代表発起人」と「名誉顧問」を務めてきたのが安倍首相の夫人・昭恵だ。彼女が関わりを持つようになって以降、多い年には47もの行政機関から後援を取り付けた。また70名近い国会議員が顧問などを務める。
いわゆる「カルト」のような事件を起こしている団体ではない。しかし「FUJISAN地球フェスタWA」は子供連れ客の来場も想定した内容で、教育委員会などの教育関係機関も多い年で17も後援につく。偽史に基づいた宗教イベントに国会議員ばかりか子供まで巻き込んでいる。カルトというよりニセ科学に近い問題だろう。
「FUJISAN地球フェスタWA 2020」は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となったが、今年も現職の国会議員58人が顧問等で名を連ねた。2015年以降、
毎年皆勤の国会議員は54人もおり、
政党別では自民44、公明5、維新2、国民1、立憲2となっている。
「FUJISAN地球フェスタWA 2020」の役員を務める閣僚は、以下の通り。全員が、2015年から現在までの「皆勤賞組」だ。
総務相・武田良太:特別顧問、代表発起人
厚労相・田村憲久:顧問
一億総活躍担当相・坂本哲志:顧問
経済再生担当相・西村康稔:顧問
国際博覧会担当相・井上信治:顧問
閣僚以外の内閣の役職者は、以下の通り。こちらも全員が2015年以来の「皆勤賞組」。
厚生労働副大臣・三原じゅん子
農林水産副大臣・葉梨康弘
農林水産副大臣・宮内秀樹
総務大臣政務官・谷川とむ
内閣総理大臣補佐官・木原稔
党4役では、選対委員長・山口泰明も2015年以降、毎年顧問を務めている。
※敬称略
<取材・文・図版作成/藤倉善郎 取材協力=鈴木エイト>