ついに始まった人気パチスロ「神々の凱旋」撤去。ファン、店舗、業界全体の交錯する想い

「2つのルール」で揺れる業界にとっての「凱旋」撤去

「凱旋」を巡っては、店舗レベルではない、パチンコ業界全体の視野においても少なからず他の遊技機にはない事情がある。  先述した通り「凱旋」の撤去には、2つの「ルール」が並行して適用されている。  一つは遊技機等規則の改正-要は法律変更による撤去。もう一つは高射幸性遊技機の優先・段階的撤去の取り決めという自主規制。似て非なるこの二つのルールが「凱旋」撤去に関わる問題を複雑にしている。  何が複雑なのか。  実はコロナ禍による社会生活の変化を受け、本年5月、国家公安委員会規則が改正され、旧規則機の設置期限が1年間延長されたのだ。その背景にはメーカーによる新台供給の停滞、遊技機入替による人の接触機会の低減等があげられるが、5月の規則改正だけを見れば、「凱旋」の設置期限も2020年11月から2021年11月に延長されたことになる。  しかしパチンコ業界内の関連団体で構成される「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」では、国家公安員会規則が改正されたにも関わらず、高射幸性遊技機である「凱旋」は本来の設置期限満了をもって撤去するよう推し進めている。万が一、「凱旋」を撤去しないパチンコ店があれば、業界独自のペナルティを課すことも辞さない強硬な姿勢を見せている。

「6号機」の規制緩和の議論を見据えた「自主規制」

 幾つかの業界関連誌を読めば、「凱旋」の撤去に関してダブルスタンダードが適用される事情がおぼろげながら見えてくるのだが、要は「凱旋」を始めとした高射幸性遊技機の撤去は、ギャンブル等依存症対策を推進する警察行政も望んでいることであり、警察庁としては、他の遊技機の撤去期限はコロナ禍を考慮し設置期限を延長するが、こと高射幸性遊技機に関してはあくまで業界内の自主規制をもって撤去を強く推進してほしいという考えがあるのだ。  パチンコ業界にとっても、高射幸性遊技機の全撤去が完了して初めて現行機である「6号機」の仕様に関する規制緩和を議論のテーブルに乗せることが出来ると考えている。短期的な視点で考えれば「凱旋」の撤去は痛手ではあるが、中長期的な視点では業界浮上のきっかけになるという思惑が見え隠れする。 「ミリオンゴッド~神々の凱旋」という名のパチスロ機。  パチンコ業界を代表する名機の撤去の陰では、ファンのみならず、パチンコ業界に関わる様々な人たちの想いが交錯している。 <文/安達夕 写真/栄華
Twitter:@yuu_adachi
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