「休憩なしで13時間勤務、有給なんてもらったことない」
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次に話を聞いたのは、都内のラーメン店で約2年半アルバイトをしていたという斉藤涼太さん(仮名・23歳)。
「忙しいときは休憩時間なしで10時〜23時まで働いていました。タイムカードの出勤時刻が30分単位だったので、10時01分になったら10時30分からしか給料はもらえませんでしたね。2年半働きましたが、有給をもらえたことはないです」
それほど劣悪な労働環境で、不満を感じたことはなかったのだろうか。そう尋ねると、驚きの答えが返ってきた。
「いや、まかないがタダだったので“神バイト”ですよ」
話を聞くと、斉藤さんが働いていた店のアルバイトは全員大学生だったという。一人暮らしの学生に「まかない」という甘い蜜を吸わせて不当に働かせる…ここまで来るともはや洗脳に近いのではないかという気すらしてくる。
労働基準法39条には、「雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定められている。これは基本的に週所定労働時間が30時間以上、または週所定労働日数が5日以上のアルバイトに適用されるものだ。
しかしながら、週に30時間以上、または週5日以上働いていないアルバイトに有給休暇は与えられないのかというとそうではない。「週所定労働時間が30時間未満で、なおかつ週所定労働日数が4日以下のアルバイトやパートに適用される」、「比例付与」というものがあるのだ。例えば週に3日アルバイトをした場合、全所定労働日数の8割働けば半年後には5日の有給休暇が与えられる。
立教大学法学部消費者法ゼミの調査でも、6カ月以上勤務する学生124人に取得経験の有無を聞くと、「ない」が74%、「ある」が26%という結果になった。また、同調査で賃金の支払いについての学生の意識を聞いたところ、1分単位でないにもかかわらず「特に何も思わない」という回答が過半数を超えていた。これでは大学生はずっと「搾取される」立場になってしまう。
本来であれば雇用主側が適切にアルバイトを働かせるよう変わっていくべきだ。しかしながらこういった実情がまかり通っている現在、雇用主側が変わることを期待できないということもまた事実だ。悲しいかな、搾取されないためには私たちが「知り」、そして「行動する」しかないのだ。
<取材・文/火野雪穂>