学術会議を改革するのであれば、6人を任命した後にすべき
全く質問に答えない菅総理に対して、川内議員はここから約3分半にわたって、現在の問題点と解決の道筋を整理しながら質問し、冒頭で紹介した菅総理の決定的な答弁を引き出していく。その質疑は以下の通り。
川内博史議員:「この問題を解決できるのは総理しかいないので。これね、あの、突っ張っても違法状態が続くだけなんですよ。なぜなら、なぜなら、総理のところにはね、梶田会長の『6名任命してね、お願いしますよ』という要望書が来ましたよね。これは法的にはたぶん日本学術会議が『6名をもう一回推薦してね』と総理に持ってきてるんですよ。で、総理の手にその6名の推薦名簿があるんですよ、今。で、それを推薦しないとですね、
その方たちを推薦しないと210名が会員として揃わないので、総理大臣としての責任を果たしていないってことになるんです。なぜなら210名の会員を組織させるのは総理大臣の責任だから。最終的に。だから、この問題を解決できるのは総理しかいないんです。たった1人なんですよ、この国で。
(中略)
で、あと、学術会議のことがちょっと、『ずっと前から俺は問題に思ってたんだ』と、『改革したいんだ』と。だって改革者だからね。あのー、
『改革しなきゃいけないんだ』と仰るのであれば6人を任命した後、正式な会議体をつくって、『議論してね』と。そして『会員の推薦のあり方等を含めてちゃんとしてね』と。これまでと同じやり方をやっていくということが、あー、信頼を受ける、国民に信頼される政治ではないかというふうに思います。そうじゃないとですね、総合的俯瞰的にですね、国民の皆さんからですね、菅内閣は訳わからんと思われちゃうんですよ。
あの、総理ね、総理が1人なんですよ、これ解決できるのは。このまま学術会議が『6名の推薦を取り下げません』と、『あくまでも任命してください』と言い続けたら6名がずっと欠員のままですからね。それは政府としてやってはならないことですから。総理として考えると、梶田会長を呼んで考えると、よく話し合ってみると。もう梶田会長は『6名推薦してね』と来ちゃったんですから、来てるんですから、要望書は出てるんですよ。総理のところに。それは、あー、ちゃんと話すからというぐらいはしないとですね、これずっと続くんです。膠着状態が。それは、このコロナ禍でですね、コロナ禍で他に議論しなければならないこともたくさんあるんですよ。総理として決断してください。」
菅義偉総理:「
あのー、理論的には川内委員が言われる通りだという風に思います。(
青信号)
で、梶田会長が来られた時にそれは確かに受け取りました。あのー、任命の要望書について。その上で、えー、梶田会長とは『国民から理解をされる会議にしていきたいと』と、『学術会議にしていきたい』と。さらに、そのために何をやるべきかということも一緒にやっていきたいと。まあ、そうしたことについては合意をしまして、いま、井上大臣のところで梶田会長と、おー、会談をして、そうしたことを進めさせて頂いているところであります。(
黄信号)
その、任命するしないということは、あのー、そのままの状況になっています。で、結果として、えー、理論的には川内委員の言う通りだという風に私は思っています。(
青信号)」
川内議員は「任命拒否された6名を推薦する要望書を日本学術会議が提出した中、現在の違法状態(=定員より6名少ないこと)を解決できるのは菅総理ただ1人しかいない」ということを制度上の事実を踏まえて何度も繰り返し訴えながら、解決の道筋を示していった。そして、日本学術会議の改革を行うのであれば、6人を任命した後に行うべきであるということも指摘している。
これに対して、菅総理は2段落目については周知の事実(梶田会長とのやり取りの経緯)を述べているだけで黄信号としたが、1段落目と3段落目の青信号において、川内議員の提案に対して、「
理論的には川内委員の言う通りだ」と非常に肯定的な反応を2回も示している。
この質疑のやり取りをそのまま解釈すれば、
現在の違法状態、そして解決するには6人を改めて任命するしかないということを菅総理は認識していると言えるのではないか。これまで任命拒否をめぐる問題の核心については頑なに口を閉ざしてきた菅総理だが、この質疑は問題解決に向けた大きなターニングポイントになるかもしれない。
<文・図版・動画作成/犬飼淳>