社会変革を目指した若者たちの現在。台湾の「ひまわり運動」を追ったドキュメンタリー『私たちの青春 台湾』傳楡監督

台湾の社会運動に奮闘する若者たちを描く

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(C) 7th Day Film All rights reserved

 台湾の社会運動に身を投じ、世の中を変えたいと奮闘する若者たちの姿を描いた『私たちの青春、台湾』がポレポレ東中野にて公開されています。  ひまわり学生運動のリーダー・陳為廷(チェン・ウェイティン)、台湾の社会運動に参加する中国人留学生の蔡博芸(ツァイ・ボーイー)。 2011年から参加した社会運動を通して“民主主義“を実現し、未来を切り開こうとする2人。  陳は香港の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、周庭(アグネス・チョウ)と交流し、後に入国禁止となった中国大陸にも足を踏み入れて台湾のあるべき姿を探り、2014年に起きたひまわり運動をきっかけに政治家を目指す。  一方、蔡は中国人留学生でありながら台湾の社会運動に参加し、10万人以上のフォロワーを持つ人気ブロガーとして民主主義について積極的に発信し、後に所属する台湾の淡江大学学生会長選に出馬。
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 ところが、陳は過去に犯したわいせつ事件が明るみになり出馬を辞退。蔡は中国籍を問題とされ、選挙で闘うことすらできずに敗北する。それはカメラを回し続けた傳楡(フー・ユー)監督の求めていた未来ではなかった。しかし、その失意は監督自身が自己と向き合うきっかけとなっていく――。    今回は、本作で金馬奨最優秀ドキュメンタリー映画賞2018、台湾映画祭最優秀ドキュメンタリー映画賞2018を受賞した傳楡監督に制作の経緯や本作に寄せる思いなどについてお話を聞きました。

奮闘する若者たちと出会って

――制作の経緯についてお聞かせください。 傳:蔡博芸は、元々おとなしい人で、中国にいた頃は社会運動に興味がなく、また社会運動に参加するチャンスすらありませんでした。ところが、台湾に留学して付き合い始めた年上のボーイフレンドが社会運動の経験者でした。それがきっかけで彼女自身も社会運動に興味を持つようになるんです。
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傳楡監督

 陳為廷も屈託のない、普通の若者でした。私自身は社会運動をよく知らず、またいいイメージも持っていなかったのですが、彼らに出会って、従来の社会運動とは違うイメージを持ったんです。  彼らを知りたいと思ったのが、映画制作のきっかけでした。彼らを追いかけるうちに彼らには彼らが考えている正しさというものがあり、不満、不公平に対して声を上げていく必要があるということを理解できたんですね。 ――台湾生まれの学生には、中国出身の蔡さんの存在そのものが受け入れられない様子などが描かれていましたが、台湾人の多くの方々はこのような考え方をしているのでしょうか? 傳:彼女は台湾が好きで台湾の社会運動にも参加しており、ある意味、台湾のことをよく理解しています。しかし、実際には彼女が中国人だというだけでスパイではないかと疑いを持たれたり、疎外されてしまうようなこともあります。中国を嫌いな台湾人はたくさんいて、それは一般的な傾向と言えるんですね。  でも、そのことで台湾人を責めることはできません。台湾と中国は戦争状態ではありませんが緊張関係にあります。そして、多くの中国人にとって台湾は中国の一部であるという感覚があります。
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 そういう意味では台湾人が警戒心を持っているんですね。戦時下であったように、今でも中国が台湾に対してスパイ的な活動をすることはあります。彼女とは仲良くしていましたが、そういう過去がお互いの祖国の背景にあることは事実です。  私自身は中国共産党に対する反発を感じることがありますが、中国の人たちとはつながれるかもしれないと考えていました。それが映画を作ろうとしたきっかけでしたが、そのことは悲しいことでした。 ――陳為廷さんは人を組織して率いることの難しさや痴漢をしてしまった理由、また学生運動で自分が英雄視されたことなどについて、率直に傳監督に語っていますが、どのようにして陳さんと信頼関係を築き上げたのでしょうか? 傳:陳とは蔡と知り合う1年前に知り合ったのですが、私の一つ前の作品の登場人物であり、私は彼のことを良く知っています。そして、彼も私の作品を知っていますが、私が彼を悪く描かないということも理解しています。彼のことを省みているような視点で作品作りをしており、そういう意味で信頼していたのではないでしょうか。 
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自分は台湾人という思い
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