「維新」対「毎日」のバトル勃発。維新の無理筋批判は大阪市の住民投票に影響するか

「大誤報」「捏造」と批判するのはあまりに無理筋

維新副代表の吉村洋文・府知事

維新副代表の吉村洋文・府知事にも聞いたが、「『毎日新聞』の記事はデマです」と答えた

 こうした両者の質疑応答は10分以上続いたが、市財政局が『毎日新聞』の記者の圧力や誘導で捏造した試算を出したとは考えにくい。というのも、10月27日の時点では「捏造」「誤報」といった否定的な発言はまったくしていなかったからだ。松井市長が部下の財政局長に圧力をかけて、発言内容を変えさせた可能性のほうが高いとしか考えられない。  しかも財務局への取材をしていたのは合計3社で、記者から圧力や誘導を受けたと財政局長が会見で話したのは『日経新聞』だった。しかし試算結果を受け取りながら『日経新聞』はなぜか報道せず、『毎日新聞』が『日経新聞』の取材攻勢の“濡れ衣”を着せられて、維新は「毎日の圧力による誤報」といった批判をしていた。この食い違いを『毎日新聞』の記者が指摘すると、松井氏は「君のところばかりだと思ってた。そこは僕の勘違いや」と認めた。  今回、市財政局が出して『毎日新聞』が報じた試算は、市を4分割することによる「スケールデメリット(規模縮小に伴う負担増)」を見積もった参考値のようなものだった。住民投票で賛否を問う「大阪都構想(大阪市廃止と4特別区への移行)」においての負担増の金額を割り出したものではなかった。  このことは記事の中でも説明してあり、「大誤報」「捏造」というレッテルを貼って『毎日新聞』を批判するのは、あまりに無理筋なのではないか。この批判が成り立つならば、コロナの影響も無視してポジティブな効果だけを喧伝している維新のデータこそがその批判を真っ向から受けることになるのではないか?  投開票3日前に永田町に飛び火した“維新対毎日”のバトルが住民投票にどんな影響を与えるのか。11月1日の結果が注目される。 <文・写真/横田一>
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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仮面 虚飾の女帝・小池百合子

都民のためでも、国民のためでもない、すべては「自分ファースト」だ

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