事の発端は独立派政党「カタルーニャ民主集中」の外交を担当していたビクトル・テラデーリャスが5か月前からゴルバチョフの時代に創設されたロシアの「あるグループ」とクリプトコインの基盤づくりで関係を持っていた。カタルーニャ州政府は独立した暁にはクリプトコインを採用することを考えていたからだという。
このグループがテラデーリャスにロシアはプッチェモンに1万人の部隊を送ることとカタルーニャが抱えている負債を決済する意向のあることを伝えたというのである。ロシアが望んでいるのはカタルーニャをスイスのような中立国にしたいということであったという。
ロシアのグループがカタルーニャの独立を支援するには動機のようなものが必要なはず。突然、軍隊を送るといった提案はしないはずだ。実は、その動機となった一つと思われるのは昨年11月に例えばスペイン電子紙『
20minutos』(2019年11月22日付)で取り上げられている。
この記事によると、テラデーリャスが2017年にプーチンに繋がる有力議員セルゲイ・マルコフに接触してカタルーニャはクリミアのロシア併合を認めることを条件にロシアはカタルーニャの独立を支援して欲しいことを表明したというのである。それに対してマルコフはカタルーニャ紙『El Periódico』の取材に答えて、「ロシア政府はカタルーニャの件に関して関心がない」と回答したことが同電子紙でも掲載された。
しかし、これは飽くまで外交上の駆け引きで、マルコフはそのような回答をしたまでのことで、ロシアはEUの勢力を弱めるべくEU加盟国の中にある独立問題については常に強い関心を持っていることは公然の事実となっている。
また、別の情報筋によると、ロシアはカタルーニャが独立した暁にはバルセロナ港をロシアが利用できるようになることも条件としてつけたという。
今回のロシア軍のカタルーニャへの派遣について、それが治安警察の方で明らかになったのはテラデーリャスがカタルーニャ共和国左派のシャビエル・ベンドゥレイルとの2018年5月16日の電話での会話を治安警察が盗聴。その話の内容からこれら一連のことが分かったのである。アギッレ判事はこの盗聴は紛れもない本物だとして今回の報告書にそれを加えたというわけである。
その会話の中でテラデーリャスは彼が2017年10月24日にプッチェモンにロシアからの軍隊の派遣する用意があるいうことを伝えると、プッチェモンはビビッて「パンツにくそをした」と表現したようだ。(参照:「
La Vanguardia」
一方、この軍隊派遣の用意があったという報道について、早速在マドリードロシア大使館からこの情報を嘲笑するかのように、「派遣する軍隊の数が2桁足らない」と表現したことが『
El País』によって明らかとなっている。
<文/白石和幸>