実験に使われたパチンコ店は名古屋市内のホールで、設置台数700台規模の大型店。
客室に充満していたスモークはおよそ10分でほぼ消えた。実験の監修をした愛知医科大学の三鴨廣繁教授は「換気対策はこれ以上のものはなかなか難しいんじゃないかと思います。
換気に関して、密閉は少なくとも否定できるであろう」と評している。
ちなみにこの三鴨教授は、映画館の換気力の調査動画作成にも協力している。空前の鬼滅ブームで観客が大挙して押し寄せる映画館であるが、全国興行生活衛生同業組合連合会が、
映画館内の空気の流れを可視化したところ、352席の劇場の空気は約20分ですべて入れ替えられた。多くの人が「換気が悪そう」、「三密だと思う」と思っていた映画館は、実は優秀な換気力を誇っていた。
パチンコ店はその倍の換気力である。
実はパチンコ店の換気力を証明する動画は別にも製作されている。
愛知県と岐阜県に25店舗のパチンコ店を展開する、株式会社善都(ホール名:ZENT)が運営するYouTubeチャンネルでも、自店における換気力の実証実験を行っている。
総設置台数808台の
大型店であるZENT各務原店の店内を覆っていたスモークは8分で消え去った。
パチンコ店の歴史は、タバコの煙や匂いとの戦いでもあり、多くの遊技客が喫煙するパチンコ店の換気力は、他の屋内施設では考えられないほど強力なのだ。
そのうえで、パチンコ店ではその換気力に頼るのではなく、遊技台の消毒や遊技台間の飛沫感染防止ボードの設置、開店前の行列のソーシャルディスタンスの徹底等、意図せず世間の注目を浴びてしまったからこその徹底した対策がある。
前出のパチンコ店経営者は言う。
「冬になれば感染が拡大する可能性もある。この実験の結果で気を緩めるのではなく、改めて感染防止対策の徹底を図ってもらいたい。このような環境下でもお店に来てくれるお客さんが快適に遊技出来る環境を提供したい。お客さんにも、マスクの着用や手指消毒の不便を掛けるかも知れないが、お店のお客さんが力を合わせて、パチンコ店のニューノーマルを作っていければ良いと思う」
パチンコ店だけではない。すべての接客業態のお店は、少しでもお客さんに安心な環境を提供し、一人でも多く来店してくれることを望んでいる。
たかが10分程の動画からは、店側の、多くの人たちの切なる願いが読み取れる。
<文/安達夕>