数学は現在の共通テストでは、「数学I」「数学I、数学A」「数学II」「数学II、数学B」「簿記・会計」「情報関係基礎」の6 科目ありますが、これを「数学I」「数学I、数学A」「数学II、数学B、数学C」の3科目にするという報道でした。
(※) 多くの人は、「数学I、数学A」と「数学II、数学B、数学C」を選択することになります。
ここまでは正しいのですが、実際はもう少し踏み込んだ内容が「文書 74」には書かれています。そこには、「数学II、数学B、数学C」(以下、「数学IIBC」と記す) について書かれており、「『数学B』及び『数学C』については、『数学B』の2項目の内容(数列、統計的な推測) 及び『数学C』の2項目の内容(ベクトル、平面上の曲線と複素数平面)に対応した出題とし、このうち3項目の内容の問題を選択解答させる」とあります。
この検討中案どおりであるとすれば、非常におかしなことを含んでいますので、少なくともこのままの形で令和7年の共通テストは実施されないと考えられます。以下にそのおかしな点を記しましょう。
おかしな点1: 数学Bは、「数列」「統計的な推測」「数学と社会生活」の3項目で構成されているが、「数学と社会生活」を履修した場合、共通テストでは選ぶものがない。また、数学Cについても「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」「数学的な表現の工夫」の3項目で構成されているが、「数学的な表現の工夫」を履修した場合も共通テストでは選ぶものがない。数学B、数学Cではどの2つを選んでもよいことになっているので、共通テストにおいて学習した項目で受験できないなどの差別があってはならない。
おかしな点2: もしも、本当に「数学B」「数学C」の中のここで指定された範囲から3項目を選ぶことになれば、この試験を受ける人は「数学B」「数学C」の両方を履修しなければならない。(例えば「数学B」だけでは3項目は選べない。)「数学B」、「数学C」の片方だけの履修ではすまないとなれば、もはや「数学B」「数学C」と分ける意味はない。(実際、新課程において「数学B」「数学C」といった教科の分け方はいろいろな意味ですでに崩壊している。)
実は、検討案は今年の夏に日本学術会議の数理科学委員会の中の数学教育分科会で提言された「新学習指導要領下での算数・数学教育の円滑な実施に向けた緊急提言:統計教育の実効性の向上に焦点を当てて」が元になっていると考えられていますので、そちらを見る方がこのような検討案に至った経緯はわかります。(こちらの提言についても別の問題点はあるのですが、ここでは割愛します。) それによると、次のような説明になります。
”「数学B」では「数列」「統計的な推測」の他に「数学と社会生活」、「数学C」では「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の他に「数学的な表現の工夫」という項目が用意されていますが、今回除かれた2つの項目は知ることを目的とする内容なので、共通テストのような試験には向かないため除外し、残りの4項目を試験に課すべきである。しかしながら、「数学IIBC」の試験時間は70分にするのが限界であるので、3問を選択という形がよい”
このような内容の提言ですので、これに沿うように大学入試センターでも今後検討していくものと考えられます。しかしながら、実際は、「数学II」で問わなければならない項目も多いため、試験時間を70分にしたところで3問の選択問題を解くのは時間的に厳しいので、今後は2問選択になる可能性も大いにあります。そして、そのようにすることで「数学B」「数学C」の片方だけを履修することも可能になります。
<文/清史弘>