「NHKをぶっ壊す!」。
そんな過激なキャッチフレーズ、過激な政見放送、過激なパフォーマンスが話題となり、国政政党になって約1年3ヶ月。今、NHKから国民を守る党は、地方選挙ですら議席を取れなくなっている。今年に入ってから当選したのは、2月の新座市議選、4月の志木市議選のみ。しかも、志木市議選は無投票当選である。直近では、8月23日の箕面市長選と箕面市議選、9月13日の和泉市議選、10月18日の岡崎市議選で、それぞれ落選。惜しい戦いにさえなっていない。
こうなってしまったのは当然で、これまでNHKから国民を守る党がやってきたことと言えば、
不正競争防止法違反、威力業務妨害(容疑を大筋で認める)、
脅迫罪(脅迫と不正入手について無罪を主張)といった法の一線を越えた迷惑行為に加え、ヤジを飛ばした一般人の私人逮捕、センター試験直前の予備校前での大音量演説、抗議をした一般人の個人情報晒しなど、唯一の公約として掲げたはずのNHK改革がまったく進んでいないばかりか、問題のある行動ばかり。
かつては「悪名は無名に勝る」と言い、あえて炎上商法を仕掛けているかのように振る舞ってきたが、今ではどれもこれもが灰になり、燃えるものさえ残っていない。
現在、NHKから国民を守る党には、YouTubeの視聴者から衆院選の準備金として集めた5億円以上の借金があり、初年度10%、2年目以降5%の金利を支払わなければならない*ため、今年は利子だけで5000万円以上の支払いが見込まれているという。
〈*参照:
yutura〉
しかし、先日の
与儀大介(志木市議)との公開討論で、立花孝志は党の口座に入っているお金が1億円を切っていることを明かしている。もし衆院選が行われることになれば、全国11ブロックに候補者を立てるとしているので、6600万円の供託金と選挙費用がかかる。これに5000万円以上の利子の支払い、コールセンターの人件費や維持費、弁護士や司法書士への報酬、立花孝志の生活費などが加わるのだから、いくら10月と12月に政党交付金が入ってくるとはいえ、資金はショート寸前ではないかと見られている。
NHKから国民を守る党は、「
ネット選挙株式会社」を立ち上げ、選挙ポスターやビラの印刷を「自前」で行なうことによって、実際にポスターの製作にかかった原価ではなく、公費で賄ってもらえるポスター代の上限を請求することで利鞘を得てきた。ところが、選挙は連戦連敗。NHKから国民を守る党公認で立候補を希望する人も少なくなり、この方法でお金を稼ぐことは難しくなっていた。
そんな矢先、立花孝志は「ネット上の誹謗中傷の開示請求」を中心に活動している
福永活也弁護士と出会う。福永活也弁護士は、小学生YouTuberで話題の「ゆたぼん」や、インフルエンサーとして活躍する「はあちゅう」の誹謗中傷対策も無料で引き受けているという。
彼の著書に書かれたプロフィールによると、独立1年目から年収5億円以上、最高で10億円を稼ぐほどの超敏腕弁護士にして、世界七大陸最高峰の登頂と北極点・南極点到達をする「冒険家グランドスラム」に挑戦。驚くことに、既にエベレストを含む七大陸最高峰登頂と南極点到達は達成しているそうで、あとは北極点を目指すのみとなっているようだ。
あまりに壮大すぎるスケールの話だが、標高8848メートルのエベレストの頂上にも、マイナス50度に達する南極点にも立ったことのあるスーパーアスリートにして、年収10億円の超敏腕弁護士にして超敏腕実業家の福永活也弁護士が、今、立っている場所は、立花孝志の隣である。
立花孝志は最近、この
福永活也弁護士と組み、ネット上の誹謗中傷対策に乗り出すことを宣言して、自分たちに向けられたネット上の批判に対し、
手当たり次第に発信者の開示を求める仮処分の裁判を起こしている。
この手の裁判に少しでも知識がある人なら「何をしているんだ」と眉をひそめるかもしれない。というのも、この仮処分は本裁判の手前の手前に過ぎず、その道のりは険しく遠い。エベレスト登頂で言うところの、
麓の村までやってきたというレベルである。この仮処分で得られた情報から、今度はプロバイダーに対して裁判を起こし、その裁判で勝って初めて個人情報を割り出すことができ、そこからようやく本裁判に臨めるわけで、政治家である立花孝志になんらかの罵倒の言葉を言ったところで、そんなものが即名誉毀損にあたるとは考えられない。政治家である立花孝志が名誉毀損の裁判を起こしたところで、1円も取れそうにないのである。
それでも、立花孝志と福永活也が開示請求の手を緩めることはない。
第1弾として16アカウント、第2弾、第3弾と次々に開示をしているといい、これからも手当たり次第に裁判を起こすとしている。いくら福永活也弁護士が無料で引き受けているとはいえ、どうせ1円も取れない裁判のためにセコセコと書類を作り、下手すれば2年近くかかるかもしれない裁判の話をしているのだから、こんなにマヌケなことはない。
だが、立花孝志としては、これでいいのである。
立花孝志には、やたらと裁判を仕掛けてくるイメージがある。わざわざ被選挙権のない女性を立候補させようとして、立候補できないのは不当だと言って裁判を起こすくらいである。勝ち目があるとは思えないマツコ・デラックスさんを相手にした裁判や「週刊文春」を訴えた裁判を見ても、少しでも気に入らないことがあれば、すぐに裁判を仕掛けてくる。中には、N国党立川市議・久保田学の裁判のように「訴権の濫用」が認められ、原告が被告にお金を払わなければならなくなったケースもあるが、こんなに簡単に裁判を仕掛けてくる人間は、やはり恐ろしい。
立花孝志は、こうした
情報開示の仮処分裁判を起こしたアカウントに対してダイレクトメッセージを送り、100万円以上を請求する裁判を起こしてほしくなければ、住所や氏名のわかる身分証のコピーを提出した上で、指定の銀行口座にお金を振り込むように求めているのだ。さらに、住所や氏名などの
個人情報の提供を拒否するのであれば、その金額は「30万円」だと書いている。