本題のウルグアイの大統領専用機の話に戻ろう。
この専用機の購入には会計監査院も反対していたが、最終的にそれをウルグアイのメルセデスベンツのディーラカルロス・ブスティンから101万ドルで購入された。購入したのはムヒカの次に大統領に就任したタバレ・バスケス前大統領だった。ムヒカとバスケスはウルグアイにとっては新しい政党拡大戦線に属している議員で、ムヒカの前の2005年から2010年にも大統領を務めたバスケスは、その当時から専用機の購入を望んでいた。ところが、倹約を信条とするウルグアイでは議員の間でもそれに反対する声が多かったのだ。
バスケスはゲリラ出身のムヒカと違い、彼は元医師でウルグアイを国際的にもっと世界で知ってもらいたいという願望をもっていた。その為にも国際移動で専用機は必要だと主張していたのである。
結局、バスケス前大統領がこの専用機を使用したのは2年半で、それによる政府の維持費は300万ドルだったという。(参照:「
El Observador」)
大統領専用機は18万ドルでアルゼンチンのホテルチェーン経営者の手へ
今年3月に大統領に就任した国民党のルイス・アルベルト・ラカリェは従来の倹約国ウルグアイに戻るべきだとして専用機の売却を決めたもの。ウルグアイは1830年の初代大統領の時から右派のコロラド党と国民党が、途中軍事政権をあったが、政権を二分して来た国で、拡大戦線というのはバスケスとムヒカの二人による15年間の政権だけである。
拡大戦線が政権を担っていた時は野党であった国民党のラカリェ大統領は、専用機は必要ないという考えに基づいて売却することを決めていた。それも競売にかけての販売で進めた。パナマとアルゼンチンの企業家の間の駆け引きとなったが、最終的にアルゼンチンのホテルチェーンの経営者が18万ドルで落札した。
専用機を救急用としても利用できるようにしたため、その為のベッド1台にその為の設備の設置費用が9万ドルしたが、今回の売却はベッドを2台据えたかのような費用での販売だということになることを外相のハビエル・ガルシアが指摘している。
同外相は、競売で落札された価格そのものへの評価よりも、2年半の維持費用が今後必要でなくなるということに重きを置いて、「国家にとって大変重要な節約になる。それは我々の倹約政治に沿うものである」と述べた。(参照:「
El Observador」)
日本ではホセ・ムヒカ元大統領の引退だけが報じられたが、同時にコロラド党のフリオ・マリア・サンギネティー元大統領(1985-1990と1995-2000)もムヒカと同じく上院議員の席を明け渡すことにして政界から引退した。双方は長年のライバルであった。Youtubeにてこの二人の抱擁を見ることができる。
<文/白石和幸>