例えば、自分なりに創意工夫してオーナーシップをもって取り組みたいと考えている自律裁量型の部下に、リスクを心配する上司が「部下も同じように心配しているかもしれない、部下の心配を解消するのが上司の役目だ」と思い込んで、「あれはどうなった、これはどうなった、あれもチェックしよう、これもチェックする」とマイクロマネジメントをしてしまっては、
部下のモチベーションが上がるどころか、抵抗感を与えてしまう。
自律裁量の部下には、「
やりたいように試してみろ」「
試行錯誤してみろ」というフレーズが合致するし、もし仮に、それで上司の心配が収まらないのであれば、「タイミングは任せるから、気になったことが出てきたら、いつもでも共有してくれ」と言い添えればよい。
これを、あれこれ心配している安定保障型の部下に、「試してみろ」「試行錯誤してみろ」と言ってしまうと、「上司は私の心配をわかってくれていない」「ケアしてくれていない」と、モチベーションを下げてしまう。
このように、自分のモチベーションファクターではなく、
相手のモチベーションファクターに合致した内容やフレーズで指示したり、フォローしたり、サポートすれば、
コミュニケーションにおける無用の軋轢は、相当程度、解消できるのだ。
私のプログラムの演習参加者は、
2時間程度の演習で、相手のモチベーションファクターを見極め、相手のモチベーションファクターに合わせた、指示や助言の話法を繰り出せるようになる。特に
リモート環境で効果があるので、試してみることをお勧めする。
質問:マネジメントしづらくなった状況の原因は何か
「
上司が部下をマネジメントしづらくなった」「
シニアと若手でコミュニケーションがとりにくくなった」「
経営者と従業員の間に断絶がある」「
顧客苦情を収束しづらくなった」こういう問題に直面することが多くなったように思います。いったい何が原因なのでしょうか?
回答:相手のモチベーションファクターを無視したり誤解したりしている
これらの問題は、いずれも、相手のモチベーションファクターを無視していたり、誤解していたり、自分と同じだと思っていたり、相手が自分に合わせるべきだと思っていたりすることに原因があることがわかってきました。
自分とは異なる、相手のモチベーションファクターに合致した、助言、指導、進捗管理、フォローなどをしていくと、格段に相互の関係が改善するのです。そのためにも、
相手のモチベーションファクターを見極めるということが、とても大事になります。
それができていないので、公私調和のモチベーションファクターの部下に、地位権限のモチベーションファクターの上司が、「昇格できるから徹夜して土日返上でがんばろう」とお門違いな激励をしてしまったり、自律裁量の意識が芽生えた部下に、安定保障型の上司がマイクロマネジメントしてしまったりする勘違いのマネジメントが跡を絶たないのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第212回】
<取材・文/山口博>