Q.微表情からどのようにウソを推測するのでしょうか?
抑えようとしている感情が突然現れる表情を微表情と言いますが、ほとんどの方にとって訓練なしでは検知することは出来ません。微表情をとらえることが出来てもそれが何なのか明確にわからないということもあります。ですので、まずは、微表情が検知できるように研修を受けることが必要です。微表情を見た後、どう解釈するかは別の問題です。
微表情=ウソと考えるのはやめた方がよいでしょう。
例えば、私は7年前から空港のセキュリティー職員向けに研修をしていますが、セキュリティーチェック中に恐怖の微表情を検知するとします。これを怪しいと思ってはいけません。恐れを生じさせた刺激が頭の中にあることは確かでしょう。しかし、それは何なのか。そこで、会話をしてその恐れの原因を探ります。実は、駐車場に置いてきた車のランプを消してきていなかったかも知れないという理由で恐怖を抱いていた、そんな事例がありました。むしろこういう事例の方が多いのです。
ウソに伴い微表情は生じますが、微表情=ウソではないのです。真実の話をしている方の顔にも微表情が生じることはあります。ウソを推測するには、微表情の観察から始まりますが、解釈の仕方や会話の進め方は次の段階となります。
微表情の観察は、洞察を得る窓口となります。
〈※筆者注:これに関連して、マツモト博士は、「人は関心を持ってくれる人に本音を吐露しやすいという性質がある」とも仰っておりました。マツモト博士の最近の研究を追いますと、犯罪取り調べ状況におけるラポール形成(信頼関係の形成)の有効性や微表情・ジェスチャーと質問法との相乗効果について研究されています(※1※2)。相手に関心を向けるからこそ、相手から信頼を得ることが出来、相手に適切な質問をするからこそ、真実が開示される可能性が高くなる、そんなふうに思いました〉
Q.微表情を意図的につくり、相手に与えたい印象を形成したり、相手に影響を与えることは出来ますか?
微表情は意図的に作れないと思います。前々から研究したいのですが、まだ研究できていません。意図的に作ろうとすれば、人工的な表情になります。タイミングやスピードなどが自然な微表情とは全て異なります。
今まで閉じられていた世界が開かれる感覚を得ることが出来る微表情を読むという視点
Q.最後に表情に興味を抱く日本人へメッセージをお願いします。
表情に興味を持って頂きありがとうございます。色々な観点から、勉強したり研究したりすると、何でもそうですが、勉強すればするほど奥は深い。こうした知識を掘り出すプロセスが好きな方にとっては、微表情や表情の勉強は向いていると思います。そして、くり返しになりますが、微表情を読みとるスキルは非常に役に立ちます。ただし、そのスキルをどう使うか、あるいは微表情を読みとった後にどう解釈するかは上手に考えなくてはなりません。そうしたことをクリア出来れば、今までクローズドだった世界が自分にはオープンになる。これは非常に素晴らしいことだと思います。どこの職場の方でも、何らかの専門家であっても、家族内であっても、非常に大事なことであると思いますので、みなさん、勉強、頑張って下さい。
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微表情検知や表情分析に関心のある方は、マツモト博士が経営する
Humintellのサイトを覗いてみることをオススメします。微表情や微細表情、そして危険表情(犯罪・暴力行為を意図している表情)を検知できるようにするためのトレーニングツールや異文化理解力を高めるウェビナー講義、ウソ検知力を高めるためのウェビナー講義など豊富なラインナップが揃っています。また、昨今の事情に鑑み、マスク下の表情を読みとるためのトレーニングツールなどもあります。今秋、新しい世界に飛び込んでみませんか?
●関連サイト
HumintellのHP
マツモト博士のHP
※1Matsumoto, D., & Hwang, H. C. (2018). Social influence in investigative interviews: The effects of reciprocity. Applied Cognitive Psychology, 32, 163-170. First published online 19 February 2018. DOI: 10.1002/acp.3390
※2 Matsumoto, D., Hwang, H.C. Clusters of Nonverbal Behaviors Differ According to Type of Question and Veracity in Investigative Interviews in a Mock Crime Context. J Police Crim Psych 33, 302–315 (2018). https://doi.org/10.1007/s11896-017-9250-0
<文/清水建二(しみずけんじ)>