正社員:「じゃあ今後戦極が10000人規模でやったりしても難しいってこと?」
Lick-G:「むしろ
大規模すぎる会場でやると、どうしても密度とか熱量が薄くなっちゃう気がするんですよ。バトルとかフリースタイルにある余興的な側面が、拡大されてしまうというか」
正社員:「Lick-Gは『
ヒップホップのカルチャーのなかでMCバトルはサブにあるべきだ』という考え方なんだね?」
Lick-G:「僕の考えというより、会場の規模を拡大させるとバトルの持つ本質が出てくる、という話ですね。『
あの密度とか空気感は、箱がある程度の大きさだったからこそ演出できていた物だったんじゃないか』みたいな疑問が自ずと出てくるんですよ」
――過去のインタビューでは、バトルの判定の基準では「韻」が重視されすぎなんじゃないかという話もされていました。その印象は変わらないですか?
Lick-G:「『
フリースタイルダンジョン』で勝った最後のころは、そうした基準もねじ伏せられた感覚がありましたけど、基本的に韻が重視されるのは昔から変わってないと思います。見る側も韻が一番わかりやすいから、そこでアガっちゃうのもあるだろうし。そういう空間にまた身を投じるのは、さすがに違うなという感じですね」
正社員:「Lick-Gのバトルの話は面白いですよね。『それを言われちゃな』みたいな話もあるけど、納得できる部分も多いし。
今はもうバトルも全然見てないの?」
Lick-G:「
ほぼほぼ見ていないですね。このあいだ戦極の21章のDVDをもらって、飛ばし飛ばし観ましたけど、やっぱり予定調和というか、観る前の『こんな感じなんだろうな』という印象は覆らなかったです」
正社員:「そうか。でも俺としてはそのスタンスのLick-Gに出てほしいけどね。俺のほうがうまいよって自信はあるけど、今のバトルに全く興味がないっていう。その状態で出てきたら、
見てるほうはムチャクチャ面白いと思うよ。どう?」
Lick-G:「
出ないですね。ここでちゃんと言っておかないと変に期待をもたせちゃうし、自分のなかでもちゃんとはっきりさせたいし」
正社員:「……じゃ、一旦その話は終わりで」
正社員:「今後の活動はどうですか?」
Lick-G:「そうですね。バトルで自分のラップ面白いと思ってくれた人にも、自分の曲により興味を持ってもらうために、フリースタイルで作った曲とかもこの先は出していく予定です。
バトルを見てきた人たちにも、何か刺激を感じられる活動ができたらなと思っています」
正社員:「なるほどね。じゃ、曲をリリースするんだね?」
Lick-G:「そうですね。アルバムは延期に延期を重ねちゃっているんですけど、早めに出したいです。あと無観客のライブ配信イベントなどにも出演していますし、自分の
インスタでもライブやフリースタイルを見せていこうと思っています」
――正社員さんも「バトルの盛り上がり」と「音源の盛り上がり」をうまくつなげるということは常に考えているんじゃないでしょうか。
正社員:「MCたちを見ていると、
バトルと音源の両軸で活動を続けていくのは本当に難しいと思うし、しかもそれで売れるのはもっと難しい。あと、さっき話したバトルの熱量とか、会場の空気を音源につなげる方法は俺もずっと考えてるんだけど、なかなか難しいんだよ。結局みんな『
悪口の言い合いが面白い』みたいなところもあるし、某ラッパーも『
みんな俺がキレイに韻を踏むこととか、キレイにラップをすることよりも、むっちゃ悪口を言うことを期待してるからなぁ』って言ってたし(笑)」
――それは切ないですね(笑)。
正社員:「MCバトルの世界では、うまくラップしないほうが勝ったり、荒々しくラップしたほうが勝ったりするから、そこも音源とは違うのかなと。俺はもう『バトル屋さんだし』みたいな立場だから、今まで色んなことしたし。
バトルと音源をつなげる方法みたいなものは、それこそLick-Gみたいな若い人が新しいことをしてくれたらと期待しています」
――MCバトルはラップという音楽で勝敗を争う競技ですけど、そうやって音楽性以外のものが入ってきちゃうところが、よさでも悪さでもあるんでしょうね。
正社員:「Lick-Gはそれで勝敗がついちゃうのがイヤなんだもんな。判定がつかないバトルならどう?」
Lick-G:「判定がないならいいですけど」
正社員:「相手は誰がいい?
SKY-HIでやろうよ笑」
Lick-G:「今は
『誰とやりたい』みたいのは一切ないですし、やっぱり
出たくないですね」
正社員:「そっか。じゃあ、誰かとやりたい気分になる時期がきたら、また話をします。でもLick-Gはまだ21歳でしょ 戦極の『U-22 MCBATTLE』だって出れるのに」
Lick-G:「
絶対に出ないです。
2000パー出ないです」
正社員:「俺、『Lick-Gを戦極に出してくれ』ってヘッズから言われて困ってるんだよ(笑)。このままだとあと100回くらい誘うと思うよ、出ないなら出ないって言ってくれよな(笑)」
Lick-G:「そうですね。はっきりさせときましょう(笑)」
<構成・撮影/古澤誠一郎>
【Lick-G(リック・ジー)】
21歳の神奈川県逗子市出身のヒップホップアーティスト。中学時代から楽曲制作を始め、。2018年には自主レーベルZenknowを立ち上げ。2019年にはYouTube Japanがブレイクが期待されるアーティストを紹介する「Artists to Watch」にも選出された。今年は海外プロダクションのプロジェクトにも参加。最新情報はTwitter@lickgzなど各種SNSでチェック!