キャンプブームで「山買う人」が急増! でも……プライベートキャンプのために山を買うと後悔する!

境界線が不明確で隣人とのトラブルも

 大阪在住の飯田裕さん(仮名・33歳)は物心ついた頃から家族と共にアウトドア・ライフを満喫してきた熟練クラスだ。結婚後も子供を連れてのファミリーキャンプや仲間とのブッシュクラフト(最小限の道具で自然と共生する)を楽しんでいるが、今年4月、思い切って奈良県内にある700坪の山林を70万円で買ったという。 「とにかく草刈りが大変で、夏場は汗と泥に塗れて延々と単純作業……地獄ですよ。スズメバチにも出くわす命懸けの作業だけど、草刈りを仕事にしている仲間が手伝ってくれている。僕の山には井戸があるので、ありがたく使っていたら近隣の人に注意されてしまって……実は、不動産屋さんの勘違いで、井戸は僕の土地の外にあった。境界が不明確なこともある山では近隣とのコミュニケーションは必須なので、苦手な人には向いていない。友人の協力や家族の理解なしには、やっていけません」
山を買う

BEFORE→AFTER。きれいに草刈りされているが、「人の背の高さの雑草が700坪に生えている……夏場は地獄の作業です。それでも1か月後には、草刈りすることになる」

 山の近隣トラブルはよくある話のようだ。前出の辰己氏が続ける。 「境界線が明確な山林を選ぶべきなのはもちろん、流通している山林の1割ほどは実測しておらず、法務局に登記された面積と違うこともあるので要注意です」  山を持つには想像以上の苦労が伴う。先に紹介した山の購入者2人は、重機を扱えたり、草刈りのプロの協力があったりと、今も自分の山でキャンプを楽しんでいられる相応の理由があるのだ。

「山と一生共にする」覚悟が必要

 永田健介さん(仮名・42歳)は現在のブーム到来前の’13年、中部地方の180坪ほどの山林を40万円で購入。数年かけてプライベートキャンプ場を完成させた。 「40年近く放置され、当初はジャングル状態(苦笑)。ほぼ毎週末、東京から2時間半かけて妻と2人で通い、半年がかりで開拓しましたが、朝から夕方までの重労働は仕事より大変なほど。草刈り機やチェーンソーなどの用具代も山林の値段以上と、バカになりませんが、開拓そのものが好きなので苦にならなかった。今もキャンプシーズン以外に草刈りなどのためだけに通いますが、逆にやることがないと物足りない(笑)。単に遊ぶのが目的なら、キャンプ場に行ったほうが無難です」
山を買う

毎週のようにジャングル状態だった山に通い(写真上)、半年かけてコツコツと開拓。その後、プライベートキャンプ場を完成させた(写真下)

 永田さんは山の維持・管理を徹底しており、ライフワークの中心にしているが、一方で、熱量が失せてしまうケースもあるという。前出の田中氏が話す。 「キャンプ用に売られている山は小さく分筆(分割)されている上、オーナーも全国に散らばり、不在地主になっている。そのためキャンプに飽きて放置された山で何か起きても、所有者と連絡すら取れない。また近年、増えている豪雨災害で土砂崩れなどが起きれば、責任は所有者が負うことになります」  山を買うということは、一生、山と共に生きていくことなのだ。
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将来、無人島に住みたいので、想定外も全部勉強になる!
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