中曽根元総理の国葬に1億円以上? その費用で何ができるのかざっくり考えてみた

葬儀

画像はイメージ(adobe stock)

 昨年亡くなった、中曽根元総理大臣の内閣と自民党による合同葬儀に批判の声が集まっています。新型コロナウイルス対策関連の予備費も含め、約1億円が税金から支出されるためです。  しかし、国際的にも「弔問外交」という側面もあり全否定できないという声もあり、議論のただ中にあります。今回は、1億円あればどんなことができるのかを見ていきましょう。

1億円でできるPCR検査

 PCR検査の費用に充てたと仮定してみます。PCR検査は現在、感染が疑われる症状のある人や濃厚接触者と認められた人に対しては保険が適応されていますが、無症状で濃厚接触者として認められていない人は、全額負担が原則。一人当たり2~4万円の費用が掛かります。  高齢者や介護を必要とする人がいる家庭は、重篤化する確率の高い家族を守るためにPCR検査を希望する人も少なくありません。しかし全額負担の壁に阻まれ、受検を断念せざるを得なくなることが容易に想像できます。合同葬に使われる、約1億円をPCR検査(3万円として計算)に充てると、3300件以上の不安を解消することができるのです。

1億円で確保できるマスク

 次にマスクですが、一般的に出回っている不織布のマスクは、箱入りのものを購入すれば1枚あたり15円未満。4月頃のマスクパニックを考えると、台湾政府が行なっているように、政府が一定数を確保してコントロールする方法も有効であると言えるでしょう。その場合、1億円で670万枚近くを確保しておけることになるのです。  通販で1000万枚程度まとめ買いすると1枚当たり5円未満になることも。この場合にはなんと2000万枚を確保できることになります。

1億円で配備できる人工呼吸器

 日本での急激な感染拡大から半年が経ち、コロナウイルスによる肺炎は高齢者や既往症のある人にとっては、命を奪われる危険があるものだという認識が広がっています。  重篤化した患者に「最後の切り札」として使われる人工肺「ECMO」は1台1000万円~2000万円ほどするばかりか、使いこなせる技術者が不足していることが問題に。  その前段階にあたる人工呼吸器が不足する懸念について、東京大学医科学研究所の武藤香織教授は4月1日に行われた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会見で次のように語っています。「人工呼吸器などが足りなくなったときに、患者さんが急増したときに、どの人から人工呼吸器を装着させていけばよいのか。そのような判断を医療者だけに求めるのは非常に酷なこと」。  人工呼吸器が不足すれば、重症者が増加した際に人工呼吸器が使えず命を落としてしまう人が出ることが考えられます。そうなると、誰に使うかという「命の選別」をせざるを得なくなります。ここに1億円を使ったとすると、1台400万円ほどの人工呼吸器が25台購入でき、人が人の命の選別を行うという酷な機会を、わずかにでも遠ざけることができるのです。
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