百貨店の「共同仕入れ機構」が解散!――「独り立ち」迫られる地方百貨店

「独り立ちする地方百貨店」

「玉屋」(長崎県佐世保市)

現在も高島屋が主導する「ハイランドグループ」に属する「玉屋」(長崎県佐世保市)。
大都市圏でお馴染みの「Takashimaya」と類似したロゴタイプを使用していることが分かる。
多くの地方百貨店はA・D・Oに所属していたため、今後も「共同仕入れ機構」に所属する百貨店は一部のみとなる

 共同仕入れ機構の解散によって最も大きな影響を受けるのが地方百貨店だ。  役割が縮小していた共同仕入れ機構「A・D・O」ではあったが、当初の大きな目的であった「共同仕入れ」は現在まで続いており、その大きなメリットを受けていたのは売上規模が小さな地方百貨店であることは言うまでもない。  A・D・Oの幹事企業を務める三越伊勢丹は全国各地に多くの店舗を展開しており、単体でも大きな売上がある。それに対し、単体での売上規模が小さな地方百貨店は小ロットでの注文しかできないばかりか、とくにアパレルではトレンド商品が売り上げ規模の大きな大手百貨店のみに優先して入荷されることもあるため、地方百貨店は品揃え自体が見劣りするものとなってしまう。  A・D・Oに加盟する地方百貨店は業界のなかでも比較的好調な「地域一番店」が多く、百貨店業界が苦境に陥るなかでも21世紀に入って経営破綻を起こした加盟店はなかった。しかし、2020年1月には山形県で唯一の日本百貨店協会加盟店であった「大沼」(1700年創業)が自己破産(閉店セールとして営業再開したのち9月に閉店)。そして、4月から5月にかけては新型コロナウイルス流行の影響により多くの加盟百貨店が営業をおこなうことさえできなくなってしまった。こうしたなかでの共同仕入れ機構の解散は、地方百貨店の経営に大きな影響を及ぼすことは確実だ。

転機を「チャンス」に変えられるか?

 その一方で、共同機構の解散は地方百貨店が「独り立ち」する大きな「転機」であるともいえる。  A・D・Oが解散したことで、地方百貨店は今まで以上に自社単独での経営判断を迫られることとなる。これまでの地方百貨店は、伊勢丹など共同仕入れ機構の幹事となる大手百貨店が提案(仕入れ調達)したブランドや販促キャンペーンを自社なりに解釈し、そしてそれを移植することで多くの売場を組み立ててきた。共同仕入れ機構の存在が地方百貨店の売場や商品を大手に近い水準にまで押し上げるはたらきを持ったことは先述したとおりである。  一方で、全ての地方百貨店が首都圏の「伊勢丹並み」「三越並み」の売場を維持することは非常に困難なことであり、また一部企業では「大手の系列」という「店格」を維持しなければならないという義務感が、地方の消費者による「ファストファッション」「大手雑貨店」などの導入を求める声への対応を難しくしていたともいえる。
高島屋(左)と玉屋(右)の紙袋

高島屋(左)と玉屋(右)の紙袋。
共同仕入れ機構を通して大手百貨店と提携した地方百貨店は「紙袋」や「包装紙」まで大手百貨店とほぼ共通のものを使用する例もあり、それゆえ「大手並み」の売場づくりを求められることもあった

そごう徳島店

今や「ファストファッション」や「大手雑貨店」を集客の要とする百貨店も少なくない。
写真の「そごう徳島店」は徳島県で唯一の百貨店であったが8月に閉店

 今回の共同仕入れ機構の解散によって、地方百貨店に対する大手百貨店の影響力が薄まることで、全国各地の地方百貨店たちはより一層「地域の買物客が本当に必要としている品揃え」へと進化を遂げていく可能性もある。  コロナ禍により苦境を極めるなか、共同仕入れ機構の解散によって「独り立ち」を迫られることになった地方百貨店。 果たして地方百貨店はこの「転機」を「チャンス」へと変えていくことができるであろうか。ポストコロナ時代を生きる地方百貨店の「新たな姿」に期待したい。 <取材・文・撮影/淡川雄太 若杉優貴(都市商業研究所)> 参考文献: 伊勢丹広報担当社史編纂事務局編纂(1990):「伊勢丹百年史 : 三代小菅丹治の足跡をたどって」 多田應幹(2012):「百貨店のマーチャンダイジングの変遷」桜美林論考ビジネスマネジメントレビュー(3) ストアーズレポート 各号
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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