法廷沸かせた爆問・太田光 裏口入学について裁判で語られたすべて<裁判傍聴記・第4回>

週刊新潮の編集長が証言台へ

 今度は新潮社の番。証言台に上がったのは週刊新潮の編集長だ。平成元年に新潮社に入社し、『FOCUS』『新潮45』などを経て、週刊新潮にやってきたという生粋のスクープ野郎である。編集長によれば、事件の裏幕は以下のような流れだ。  青山・六本木を中心に一級建築士として活躍していた父・三郎さん(六本木にできた叙々苑1号店の設計と内装、さらに看板のロゴは三郎さんによるもの)。裏口入学ネットワークの窓口となった経営コンサルタントの男性も同じ界隈で仕事をしていた。裏口入学ネットワークは指定暴力団とも関りがあったとされているが、その正体は同暴力団員の娘であるS子。  S子は毎日のように六本木を遊び歩いており、そのルートで経営コンサルタントと知り合ったという。そして父・三郎さんが、「息子は割り算もできないほど馬鹿なんです」と経営コンサルタントに泣きつき、「ホテルで缶詰め作戦」を実行。  入学後、大学への寄付金という形で800万円を支払ったらしい。しかし、それがのちの太田光だとは露知らず。数年後有名になった際、S子が経営コンサルタントに「あのときあなたが裏口入学させた三郎の息子、太田光だよ」と報告。男性は驚き、編集長にタレこんだというわけだ。  そもそも裏口入学ネットワークってなんだよと思うところだが、編集長によれば、「当時は、日大、帝京、青学、学習院などなど裏口入学の枠があり、大学が裏で取り仕切っている。その窓口には限られた人しかアクセスすることができない」という。  さらにこの経営コンサルタント、編集長とは長い付き合いで過去に何度か別の情報提供をしているという、れっきとした「ネタ元」。察するに、これまで週刊新潮が報じてきた大スクープになかにも、彼が「ネタ元」になったものがあるはずだ。経営コンサルタントは記事内で「日大関係者」として複数の証言をしているが、太田さんはラジオで「日大関係者、会わせろよって。本当に俺は逃げも隠れもしないし、テレビで公開討論してもいい、嘘だってわかってんだから」と話している。  しかし、この経営コンサルタントが証人として法廷に出てくることは絶対にない。スクープの「ネタ元」が裁判に引っ張り出されるなんてことが起きれば、週刊新潮の信用はガタ落ち。だれもタレこみなどしなくなるだろう。

新潮社が用意した2つの証拠

 今回の裁判で注目となったのは、新潮社が裏口入学の証拠となるものを法廷で示せるか。そうすれば、太田さんの訴えは取り下げられることになる。しかし、800万円を支払ったことがわかる記録は結局どこにもない。証拠がないものを勝手に書くな、という訴えはごもっともであり、形勢的には新潮社が押されているように思えるが、同社が用意した証拠なるものは以下の2つだ。  まずは週刊新潮の記者が太田さんの高校時代の同級生から聞き出した証言。裏口入学の件は伝えずにただ一言「学生時代、太田さんの成績はどうだったか?」という質問に対し、同級生は「割り算ができなくて驚いた」と答えたという。それにより、父・三郎さんに「息子は割り算もできないほど馬鹿なんです」と泣きつかれたという経営コンサルタントの証言の信ぴょう性は高くなる。  もうひとつは、1984年3月2日に太田さんが在籍していた大東文化大学第一高等学校において行われた進路調査の書類である。なぜそんなことが記録に残っていないのかは疑問だが、太田さんが日芸に合格した1984年の合格発表日は誰が調べてもわからない。しかし、例年のスケジュールを見るに、合格発表は試験の5日後。その年はうるう年で試験は2/25だったため、3/2の進路調査前には合格発表がされているはず。  だが、太田さんが記入した進路調査の進路先には「横浜放送映画専門学院」と記されていた。しかも、進路先が決まっていない学生の横には、「他大学受験中」との記載があるが、太田さんの横にはその記載がなかった。仮に日芸の合格発表が3/2以降だったとしても、小6からずっと憧れだった日芸。「他大学受験中」と記載するのが自然な流れだ。  また、週刊新潮の女性記者は記事掲載当時、太田さんの高校時代の担任のT先生に取材をしており、そのときの印象を証言台で「私はT先生に裏口入学の件は伏せたうえで、“学生時代の太田さんはやはり成績がよかったのでしょうか?”と前向きな問いかけをしたにも関わらず、成績が良かったという前向きな答えは得られませんでした。原告の味方をしているとしか思えず、驚いています」と語った。  素人の目線からすると、新潮社が用意した証拠には正直「なるほど」と頷いてしまう部分ある。まず早急に調べるべきなのは、1984年の合格発表の日。頑張ればわかりそうなものだけど、そんなに難しいものなのか。経営コンサルタントの男性については、週刊新潮を出し抜くために、各週刊誌がその存在を血眼になって探していると予想する。判決の12/21までに週刊文春あたりが経営コンサルタントと週刊新潮編集長の密会でも隠し撮りするんじゃないかと期待しているが、どうだろうか。 <取材・文/國友公司>
くにともこうじ●1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライター活動を始める。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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