バー経営で培った接客スキルが重宝され転職後年収3倍に
「工事担当は客と親しくしすぎても嫌がられる。その点、おじさんは適度な距離感を知っているから有利かも」と徳井さん
現在、大手通信会社の契約社員として、インターネット訪問開通工事の仕事を行っている徳井優太さん(仮名・47歳)。その前は、中央線沿線で
バーを経営していた。38歳まで定職に就かなかったが、「40代目前で、『さすがにまともな仕事に就かないとまずい』と思ったんですが、この年齢で雇ってくれる会社なんてないだろうと思い、開業しました」という。
バーを経営しながらも昼間は、フリーター時代と同様アルバイトをして過ごしていたが、そのうちの一つが、現在の仕事だ。契約社員の募集を見かけたのは44歳のとき。常連客の足が遠のき、経営が落ち込んだ時期だった。
「バーの売り上げで手元に残るのは20万円ほど。開通工事の仕事も同じくらいもらえていたので、専業で働くことにしました」
勤務日数は週に5日。歩合制で、徳井さんの月収は最大60万円前後になった。しかし、最初のうちは苦労も多かったとこぼす。
「まともな仕事をしてこなかったから、一般的なビジネスマナーがわからなかった。タバコの臭いがする、靴下が汚いなど清潔感がなくてもクレームが来るので、1年目の夏は、毎日替えのシャツを持ち歩いていました」
また、実のところ開通工事の仕事は誰でもできるというわけではない。
「僕と同世代でこの仕事に就こうとする人は、
会話が苦手で不採用になる人が多いんです」
一度きりの訪問でも、態度や服装に難があるとクレームが入り、仕事が減ってしまうのだ。その点、バー経営で接客経験豊富な徳井さんは有利だった。
またその他にも、「中年だからと
選択肢を狭めずに、情報を探し続けた」のも成功の要因になったと話してくれた。
45歳以上の求人は、ここ数年、増加傾向にあると、大手転職サイトや人材紹介会社は口を揃える。しかし、中高年人材ビジネス業界関係者のA氏は、このように話す。
「45歳以上の求人は一見、多いように見えますが、実は有効な求人は見た目ほど多くはないのです。その理由の一つに、人材紹介会社のビジネスの変化があります」
これまで紹介会社は、企業から自力で取ってきた求人案件だけをサイトにアップしてきた。しかし現在のからくりはこうだ。例えば紹介会社Aが大手メーカーBの人事部長の求人を取ってきたとする。しかし、Aの登録者の中にBが求めるスペックを満たす人材が見当たらなかった場合、その求人案件を、登録している紹介会社だけが閲覧できるプールに入れる。それを見つけた複数の紹介会社が自社サイトや大手転職サイトに掲載するのだ。
「つまり本当は求人は1件しかないのですが、複数の紹介会社があたかも独自の案件であるかのように少しずつ文面を変えて掲載するので、たくさんあるように見えるのです。このビジネスモデルが生まれた2年前から、紹介会社と見た目の求人数が爆発的に増えました」
このやり方では、一件に人が集中するためなかなか採用に至らないが、それでも問題ないという。
「人材紹介会社が求人を媒体に出す本当の狙いは、自社の登録者を増やすことにあります。手駒が多いほど利益を上げる可能性が高くなるので。その求人案件を見て問い合わせてくる人たちをとりあえず登録だけさせて、他に内定が取れそうな案件に応募させるのです」
求人案件にも賃貸物件のような釣り広告が存在するため、要注意である。
さらに、法律上「年齢制限なし」と表記し、中高年も対象に見せかけておいて実際には若年層しか採用しない案件も非常に多いという
<取材・文/週刊SPA!編集部>