Netflixオリジナル『監視資本主義』が暴くSNSの恐ろしさ 

監視資本主義

Netflixより

 Netflixで独占配信中のドキュメンタリー映画『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』(原題:『The Social Dilemma』)は、現代の私たちが大いに怖がるべき、様々な示唆に富む内容だった。  本作ではソーシャルメディアおよびSNSが、人間にどれほどの危険な影響を及ぼすかについて多角的に論じられている。具体的にそれがどのようなものであるか、以下に記していこう。

監視資本主義の意味とは

 邦題の「監視資本主義(Surveillance Capitalism)」とは、ハーバード大学の名誉教授ショシャナ・ズボフによる造語。それは個人のデータが商品となり、その収集と生産が、インターネットの大規模な“監視”に依存しているという、市場主導型のプロセスを説明しているものだ。  こう書くと難しく感じるかもしれないが、YouTubeでおすすめの動画を紹介したり、SNSを利用して表示される広告が、その人向けに“最適化”されているという状況を例にとればわかりやすい。  いわば、プロフェッショナルのIT技術者たちが構築したシステムに沿い、スーパーコンピューター(AI)がスマホを見ている人々の行動を監視どころか、「次はこの動画を見たいと思っているな」「この広告を出せばきっとクリックをするぞ」という“予測”までしている。それは、大企業および広告主が儲かるように、システムが構築されているということでもあるのだ。

スロットマシーンや違法薬物に例えられる危険性

 劇中では、監視と予測がされているソーシャルメディアおよびSNSを利用する過程を、“スロットマシーン”や“薬物依存”にも例える。  自分が望むものが表示され、それを嬉しいと思い、広告や動画のクリック、Twitterのタイムラインの更新を繰り返すという流れは確かにスロットマシーンのようであるし、テロップでは「顧客をユーザーと呼ぶ業界は2つだけ、違法薬物とソフトウェアだ」という格言も表示される。スロットが当たりを引く時の音が連続的に聞こえ、瞳孔が縮小・散大するという薬物の症状のイメージを映し出されるという、非常に恐怖感を煽る演出もされている。  ソーシャルメディアおよびSNSをスロットマシーンや違法薬物に例える、というのは人によってはオーバーに思われるかもしれないが、利用する者に対して監視と予測が行われ、行き過ぎれば中毒になる者もいて、それは元締め(広告を出す大企業)の利益につながる、というのは事実。つまるところ、監視資本主義の考えにおける、個人(のデータ)が“商品”になっているという言説も、正しくはあるだろう。  他にも違法薬物に例える大きな理由がある。もともと人間には他者と繋がりたいという生物学的な欲求があり、人類はずっと共同体で暮らしてきて、その欲求を満たしてきた。だからこそ、瞬時に“いいね”がもらえて、他者とすぐに繋がれるように作られたソーシャルメディアおよびSNSに、人間が中毒になるのは当たり前のことではないか、と。  普段ソーシャルメディアおよびSNSを利用している時には、そうしたことを気にとめることはない。人間の深層心理にまで浸透していることを鑑みれば、こうした過剰でもある(しかし間違っていない)スロットマシーンや違法薬物の例えと演出は必要だったのだ。  その他にも劇中では様々な理論が展開するが、「ソーシャルメディアは道具ではない」にも大きなインパクトがあった。例えば、自転車そのものを批判する人はほとんどいない。それは自転車が道具であり、ただ存在し、使われるのを待っているからだ。しかし、道具ではないものは要求してくる。誘惑し、操り、何かを引き出そうとする。目標を持ち、それを追求する手段があり、人の心を操る。だから、ソーシャルメディアは道具ではないのだと。  この認識も確かに重要だ。単にソーシャルメディアおよびSNSを「便利な道具」と思っていると忘れがちな、人類が未だかつて知り得なかった危険性が、そこにはあるのだから。
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人の生き死ににも関わるSNS
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