「内容以外の要素が勝敗を左右する」Lick-GがMCバトルを引退した理由<ダメリーマン成り上がり道 #35>

 戦極MCBATTLE主宰・MC正社員が、MCバトルのシーンやヒップホップをビジネスやカルチャー面から語る本連載。今回は21歳のラッパー・Lick-Gとの対談をお届けする。『フリースタイルダンジョン』の制覇など、MCバトルの世界では好成績と圧倒的なパフォーマンスを見せ続けたLick-Gだったが、すでにバトルからの引退を宣言。その背景には、「内容と違うところで勝ち負けが決まってること」へのフラストレーションがあった。

人気と知名度で勝敗が決まる例も

MC正社員(左)とLick-G(右)

MC正社員(左)とLick-G(右)

MC正社員(以下、正社員):前回の話もそうだったけど、Lick-Gとはこういう裏話がいろいろあるんですよ。でも、大会に精力的に出るなかでは『MCバトル、何か違うな』って感覚があったの?」 Lick-G:「ありましたね」 正社員:「具体的に何がどう違ったの?」 Lick-G:「負けたバトルでも『普通に自分のほうが内容は上だったな』とほぼ毎回思ってましたし、『内容と違うところで勝ち負けが決まってるな』と感じることが何度もあったんです。たとえば戦極は小さなハコから始まった大会なので、やっぱり勝敗にも身内ノリというか内輪感が出るときがある。1回戦で負けて『これは違うな』と思って帰ったときに(『戦極 MC 感謝祭 New comer杯』2014年3月1日)、それはすごく感じましたね。あとほかの大会でも、『高校生ラップ選手権』に出場した直後の人と当たったら、内容関係なしにその人が勝っちゃうことがあって。そのときもまったく納得できなかったのを覚えてますね」 正社員:「Lick-Gがまだ『高校生ラップ選手権』に出場する前の時期に、もう『高校生ラップ選手権』に出てた人と対戦したら、その人のほうが人気があったから勝っちゃった……って話ね」 Lick-G:「僕が中3のころに初めて出た『SCHOOL OF RAP』での話ですね」 正社員:「そのときも『勝ったのは自分だ』って思ってたんだ」 Lick-G:「僕は自分のバトルを客観視して見ていますけど、『本当に負けたな』と感じた試合は数えるくらい。ほかは誰が何と言おうと、『客観的に見ても自分が勝ってるし、自分が客として見ても自分の勝ちだろう』って思うんですよ。でも、MCバトルは会場が勝敗を決めることが普通だし、そこへの違和感はバトルに出始めたころから感じていました」 正社員:「中3の頃から?」 Lick-G:「本当にバトルに出始めた、中2のころからですね。たとえば中2のころだと、『ちょっと声が高いからこいつはナシみたいな雰囲気を会場から感じることもあったんですよ」 正社員:「『そもそも中2が勝てるわけないじゃん』みたいな目もあっただろうしね」 Lick-G:「それもありますね。でも中2の最後に出場して準優勝した『Warugaki☆G.P』(2014年3月)では、そういう先入観を一切抜きで見てもらえて、それで決勝まで勝ち上がれた。そこで自信がついたのはあります」

人は内容より「結果」しか見ない

正社員:「準優勝したあと、俺にもDM送ってくれたじゃん。それで俺が『すごい!』みたいな返信したら、なんかお前、『媚びんじゃねえ!』って返してきたよな(笑)。あれ、どういう心境で返したの?」 Lick-G:「実際に急に媚びたと思ったから。結果でしか人のことを見ないから正社員:「結果しか見ないでしょ! DMもらったばっかなんだし。そういう話じゃなくて?」 Lick-G:「それはそうなんですけど、バトルで勝ったということは、『内容で相手を上回ったからこそ勝った』わけですよね。でも実際のMCバトルではそうじゃないときがある。それなのに、すべてを結果で判断しちゃうだからMCバトルはおかしくなると思うんですよね」 正社員:「すみませんでした(笑)。あと、これは興味本位で聞くんだけど、自分でも『負けたな』と思ったのはいつのバトルなの?Lick-G:「それこそ最初のUMB(ULTIMATE MC BATTLE)の予選とかは『負けで妥当だな』って感じましたね。その頃はマイクの持ち方もわからないレベルだったし。でも、負けの結果に納得できたのは本当に最初の数回くらいです」
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『ダンジョン』制覇のあとに感じた想い
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