── 菅政権では、これまで同様、人気取り、思いつきの政策が続くということですね。
森: 菅政権がコロナに十分対応できるか、非常に疑問です。象徴的なのが
Go To キャンペーンです。もともとの発案は経産省官邸官僚グループですが、その主導権を握ったのが菅です。景気対策の目玉政策として打ち出したわけですが、うまくいくとは思えません。所詮思いつきの政策です。
菅は、第一次安倍政権時代に総務大臣として「
ふるさと納税」を発案しましたが、これは本来の税制の趣旨とはほど遠く
金持ち優遇制度というほかありません。ふるさと納税で本当に地方は潤うのか疑問です。地方の自立を促すことが目的ならば、こんな政策は出てこないはずです。
菅が提唱してきた政策は、経済の足腰、地方の足腰を強くするという政策ではありません。
競争原理を働かせて大企業に有利な状況を作り出しているに過ぎません。だから、「金持ちを優遇し、格差をさらに拡大させる政策だ」と批判されてきたのですが、それに対する反省もありません。菅の政策は、彼のブレーンである
竹中平蔵の考え方に基づいたものなのでしょう。
菅は、
IR(統合型リゾート)をライフワークの一つと位置づけ、橋下徹との連携を強めてきました。また、インバウンドの拡大を推進してきましたが、現在のコロナの状況ではインバウンドに期待することはできません。インバウンドに依存した政策を再検討すべきだと思います。
── 菅政権では、安倍政権以上に竹中流の新自由主義路線が強まるということですね。
森: 第二次安倍政権が発足した時、竹中を経済財政諮問会議の議員に推したのが、菅です。ところが、麻生がそれに反対したため、竹中は産業競争力会議(現未来投資会議)の民間議員に収まり、新自由主義的政策の推進役となりました。もし、菅政権で麻生という重しがはずれれば、さらに新自由主義路線は加速するでしょうね。
── 菅官房長官は、政権の気にいらない報道に対して、クレームをつけるなど、メディアへの圧力をかけてきたと言われています。菅政権では、メディアに対するコントロールがさらに強まるのでしょうか。
森: メディア・コントロールによって安倍政権の支持率は保たれてきました。菅は、メディアとの人脈を活かして、テレビ、新聞、雑誌などに対するコントロールを強めました。
安倍首相がメディアの幹部との会食を重ね、菅官房長官が報道の現場を抑える。その両輪で、メディア支配が強められたように見えます。
政権に簡単にコントロールされてしまうメディアもだらしないと思います。最近外国メディアの取材を受けることが増えているのですが、日本では権力とメディアが蜜月関係にあって、権力に都合のいいニュースが垂れ流されていることに皆驚いていますよ。
確かに、政権中枢からの情報はメディアにとっては有難い情報です。特に横並び意識の強い日本のメディアにおいては、他社が一斉に扱っている大きなニュースを自社だけが報道できない「特オチ」を恐れます。しかし、「特オチ」を恐れる必要はありません。安倍政権下でコントロールされてきたことを、メディアはもっと自覚すべきです。そうでなければ、菅政権でも同じことが繰り返されるでしょう。(敬称略)
(聞き手・構成 坪内隆彦)
<提供元/
月刊日本2020年10月号>