――よりよいセックスワークのためにはどんな法制度があるとよいでしょうか?
畑野:売春防止法を廃止し、風俗営業法に代わる新たなきちんとした規制を作る
『非犯罪化』を目指すべきです。
似ているのは「合法化」ですが、単なる「合法化」では完全に自由になって業者への取締りがなくなってしまい、セックスワーカーの権利の向上にはつながりません。
また、近年世界で増えている「新廃止主義」では、売る側は罰せず、買う側や場所を提供する者たちを犯罪化しますが、これも問題があります。セックスワークのアンダーグラウンド化が進み、トラブルが起こっても警察を呼べなくなってしまった結果、セックスワーカーの安全性が阻害されてしまいます。
「非犯罪化」では、単に犯罪でなくすだけでなく、性感染症などの保健的な面も含めてセックスワーカーの労働者としての権利を守る規制をしていきます。それも、風俗営業法のように届出だけで規制するのではなく、罰則付きの法律で健全な経営を行うよう業者を取り締まり、強制売春や人身売買を禁止します。
また、いわゆる「立ちんぼ」といわれる個人営業など多様な営業形態をカバーすることも必要です。この「非犯罪化」に最も近いのが、オーストラリアやオランダです。こういった国では、政府からの助成金があったり、セックスワーカーのためのセンターがあったりもします。
――そういったよりよいセックスワークのための社会や法制度を実現するためにはどうすれば何が必要なのでしょうか?
畑野:現在のギリギリの経営状況では、当事者や業者がロビー活動をするのは難しいです。それでも、昔よりも活動団体は増えており、
『非犯罪化』の機運は高まっています。
しかし、何よりも、
セックスワークを反社会的なものと考えている人が多いことが問題です。アンチ・セックスワークで一番多いのは、
セックスワーカーの自主性を認めていないということですね。
こんなにも多くのセックスワーカーが性風俗で働いているなかで、自主性がないなどということは考えにくいでしょう。たとえ地方であっても性風俗店は複数あり、嫌なことがあれば他の店に移ることもできます。
「お金で縛られているだけ」というイメージ先行の考えはやめるべきです。
<取材・文/川瀬みちる>