出世につながる“空気づくり”。キーワードは「おおやけ・ばったり・おすみつき」 ――【本田哲也のパーソナル戦略PR術】

 戦略PRとは、「空気をつくって商品の売りにつなげる手法」です。前回は、「なぜ空気をつくることであなたという商品が売れるのか」をお話しました。さあ、ではいよいよ、具体的な「空気のつくりかた」にはいっていきましょう。今回は、戦略PRを成功させる「3つのキーワード」。まずはその「基本のキ」を紹介したいと思います。

戦略PRの3要素

戦略PRの3要素

1.「おおやけ」
2.「ばったり」
3.「おすみつき」

 これが、3つのキーワードです。何かの呪文みたいですね。まずはひとつひとつ簡単に説明していきましょう。

「おおやけ」は、「公(おおやけ)」のこと。ちょっとコムズカシクなりますが、世論形成には、モノゴトの「公共性」なるものが重要です。それはみんなの問題なのか、みんなで共有する価値があるものかどうか、というポイント。ちなみに「おおやけ」を辞書(大辞林)でひくと、「個人ではなく、組織あるいは広く世間一般の人にかかわっていること」と出ます。
 
「ばったり」は、「昨日アイツに渋谷でばったり会ってさー」の「ばったり」。ふたたび大辞林によると、「偶然出会うさま」。この「偶然」ということがポイントなのです。企業が自然なかたちで空気を広めるには、消費者との接点にある種の「偶然性」を持たせる必要が出てくるのです。

 最後に、「おすみつき」。これは、「お墨付き」と書けば分かるでしょう。またもや大辞林によると、「権力者や権威者の許可・承諾・保証など。また、その文書」と出てくる。要は、「あの人が薦めるんだから間違いないのだ!」という状態のこと。英語では「エンドースメント」とも言います。空気づくりには、「影響力のある第三者」の関与や推奨による「信頼性」の獲得、つまり「おすみつき」のゲットが重要な意味を持つのですね。

 専門的に言いましょう。「空気」の形成プロセスに必要なのは、「公共性」、「偶然性」、「信頼性」の3つだということです。僕たち戦略PRのプロは、企画プランニングでも実施でも、常に頭にあるのはこの3つです。これらはすべて重要で、どれかが欠けても成功が遠のいてしまいます。

「おおやけ」から考えてみましょう。まず、企業が実施する戦略PRの場合はどうなるか。よく行われる方法が、商品と社会問題をリンクさせるというやり方です。例えば、おむつメーカーは、「赤ちゃんの睡眠問題」の空気づくりから、「快適な睡眠を提供するおむつ」へ注目させます。家電メーカーは、「夫婦円満の秘訣」の空気づくりから、「夫婦げんかを防ぐ食洗機」へと注目させます。睡眠や夫婦円満の話題は、おむつや食洗機よりも公共性が高い――つまり広く世の中の関心がある話なんですね。広い関心があるから、例えばマスコミは大きく報道します。ネットでも話題になります。「おおやけ」というポイントを付加することによって、話題がパワーアップして、かつ需要も換気されます。言い方を変えれば、「なぜその商品が必要なのか」という、「大義名分」が生まれるわけです。

 これをあなたの出世に応用すると……もうおわかりですね。あなた自身に「おおやけ」を付加するということは、あなたの仕事や立場と、「みんなが広く関心のあること」をつなげることです。あなた自身がその仕事に固執して、「いかにオレはすごいか」を吹聴してはいけません。それは言ってみれば、「商品の宣伝行為」です。そうではなく、例えば、「あなたの仕事が求められる社会背景」を考えるのです。そこまでおおげさじゃなくとも、「業界内のトレンド」でもいいでしょう。とにかく、あなたやあなたの同僚や上司といった利害関係者を超えた話が重要なのです。

 少し長くなってしまったので、今回はこのへんで。次回はこの「おおやけ」の話を、さらに掘り下げてみようと思います。

<文/本田哲也>

ほんだ・てつや/1970年生まれ。セガの海外事業部を経て、1999年フライシュマン・ヒラード日本法人に入社。2006年、グループ内起業でブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。2009年に『新版 戦略PR』(アスキー新書)を上梓し、広告業界にPRブームを巻き起こす。国内外の大手メーカーなどを中心に、戦略PR自体はもちろん関連する講演などの実績も多数。近著に『最新 戦略PR 入門編』、『最新 戦略PR 実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)、『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など


この連載の記事一覧

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社扶桑社は一切の責任を負いません

ドル円は買い戻しが優勢で107円前半まで上昇

昨日のドル円は、東京市場では米国の3連休明けの5・10日(ゴトー日)とあって仲値にかけて買いが先行しました。仲値後は日経平均株価の下落などが重しとなったことで伸び悩む場面もありましたが、一方で下値では本邦勢からの買いが観測されるなか、次第に下値を切り上げる底堅い動きになりました。全般にドル… [続きを読む]
連載枠
連載一覧
菅野完

菅野完

草の根保守の蠢動

稲田防衛大臣と国有地払い下げ事件の塚本幼稚園を結ぶ「生長の家原理主義ネットワーク」【特別編】

東條才子

東條才子

現役愛人が説く経済学

年収はそう高くないけど愛人成約率抜群な「市場」とは?

北条かや

北条かや

炎上したくないのは、やまやまですが

若者の「節分離れ」は、恵方巻きのブラックノルマが原因である

マッチョ社長

マッチョ社長

筋トレで解決しない悩みはない!

間違ったダイエットで、仕事に悪影響を与えないためには?

武神健之

武神健之

ブラック化する日本企業への処方箋

外資系産業医が明かす、今年も「過労死のニュース」がなくならない原因

山口博

山口博

分解スキル・反復演習が人生を変える

いつまで経ってもスケジュールが決まらない!? 無駄なメールの応報を減らす鍵とは?

清水建二

清水建二

微表情学

ヤンキーが暴力を振るうのは、他者の表情を読み取れていないからである

都市商業研究所

都市商業研究所

JR九州「全路線で減便」の衝撃――深刻な赤字の鉄道事業、対応迫られる沿線自治体

Yu Suzuki

Yu Suzuki

快適ビジネスヘルスハック

結婚にメリットがないことが遂に科学的に証明される 研究者「既婚者のほうが孤独でストレス値が高い」

石原壮一郎

石原壮一郎

名言に訊け

つまらない悩みにクヨクヨする自分を奮い立たせる三島由紀夫の至言

大熊将八

大熊将八

ビジネスニュースの深層

『秘密結社 鷹の爪』DLE、急成長のウラに隠された決算上の疑念とは?

島影真奈美

島影真奈美

仕事に効く時代小説

おんな城主・井伊直虎を育てた師の重~い箴言

江藤貴紀

江藤貴紀

ニュースの事情

中高一貫私立でレベル無視して「検定外」教科書がもてはやされる背景

闇株新聞

闇株新聞

東芝を海外勢に叩き売ってはいけないたった一つの理由