二階建てトラックの中途半端な寝台スペースが提起する、ドライバーの労働問題
「輸送効率で犠牲にされるドライバーの居住空間。「人権なきトラック」ショートキャブの問題点」)にて長距離トラックドライバーがショートキャブ*を嫌う理由を述べたが、今回は「意外なところに寝台がついているトラック」について述べていきたいと思う〈*トラックの居住空間が最も小さな形式のトラック〉。
世間からはよく「彼らは一体どこで寝ているのか」という質問を受けるのだが、前回までにも述べている通り、彼らのトラック運転席の後部には、通常大人1人が寝転がれるほどの寝台が備え付けられており、彼らは基本的にそこで車中泊をしている。
前回は、トラックの積載量を優先するがあまり、その寝台を取っ払った人権度外視ともいえる「ショートキャブ」というトラックの存在について紹介したが、実はそのショートキャブの中には、ある場所に寝台を取り付け、ドライバーの休憩空間を確保したタイプのトラックもある。
それが「2階建てトラック」だ。
幹線道路を走っているトラックをよく見ると、運転席のあるキャブの上に帽子のような形をしたものが付いていることがある。
これは「導風板」や「エアディフレクター」、「風防」などと呼ばれ、その名で分かる通り「空気抵抗の軽減」の役割を果たしている。
また、その空気抵抗軽減に伴い走行が安定することで燃費が向上したり、キャブの天井に直射日光が当たるのを避けられることで、暑さの緩和にも効果があるのだ。
とはいえ、少しでも広い車内空間を確保したいショートキャブのトラックドライバーにとっては、その導風板のある部分は、いわば「デッドスペース」。その空間を活用し、ショートキャブで省いた寝台を設けたのが、「2階建てトラック」なのだ。
車内に伸びるハシゴや即席の階段などをつたって上に行くと、そこには通常のフルキャブよりも大きな空間が広がっている。寝返りはもちろん、諸々の生活用品も十分に置ける広さだ。
そのため、荷物を上げ下げしたり、休憩ごとに上り下りしなければならないという手間以外は、空間の有用性は非常に高く、寝台のないショートキャブと比べればトラックドライバーの労働・生活環境は格段に上がるのだ。
運転席の後部から寝台がなくなったことでより多くの荷物を輸送できるようになり、ドライバーの休憩空間も確保できる。労働者側にも仕事の効率的にもいいことばかりにみえるこの2階建てトラックだが、それでも実はドライバーからはそれほど評判は良くない。
今回、2階建てのトラックに対する意見を聞いた多くの現役ドライバーからも、やはりネガティブな意見が多く聞こえた。
その最たる理由は「暑さ」だ。
熱気は上に溜まる性質があるため、2階部分は必然的に暑くなるというのもあるが、何より天井までの距離が近いため、太陽熱をダイレクトに感じやすいのだ。
また、エンジンなどから出火した場合の非常口として、天井には大きなサンルーフ(天窓)が備え付けられているのも、より熱を感じやすくなる大きな要因だといえる。
「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。
前回(1週間以上、帰れないこともある長距離トラックドライバー
ショートキャブと比べれば快適性はぐんと上がるが……
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