大林宣彦監督が、人生をかけてこの世界に伝えようとしていたものとは

誰にも「いのち」の可能性を追求する権利があり、実現する場が必要

木々 自分が求めている新しい医療の場は、大林監督が映画を作っていた現場と同じようなものです。「いのち」を中心にして、役割や立場から自由になり、共に考え共に創造する場こそが、新しい医療の場になるのではないだろうかと。  もちろん、医療や介護や福祉の専門職はそのメンバーとして重要です。ただ、「いのち」を思い仕事についている人は他にもたくさんいます。そもそも、生きている人は誰もが「いのち」の可能性を追求して生きています。  誰もが「いのち」の可能性を追求する権利があり、実現する場が必要であり、それこそが新しい医療の場ではないでしょうか。具体的な形が大事なのではなく、その中心に据えた見えざる哲学こそが大事です。  一見すると銭湯のようで、お寺のようで、美術館のようで、保養地のような場かもしれません。そのことを『いのちは のちの いのちへ』(アノニマ・スタジオ)の著作の中で記しました。

「いのち」の可能性を探求し表現し実現できる場が必要

お祭り さらに「祭り」のようにわたしたちの祖先が伝えてきたものも、同じような思いがあったのではないでしょうか。筆者は、2020年9月にオンライン開催となる山形ビエンナーレという芸術祭の芸術監督を拝命しました。「芸術祭」も、「芸術」と「医療」とが交わる新しい場として、「いのち」のフィロソフィーを共有できる場になるのではないかと、考えています。  多様な個性が出会いぶつかりあい、「いのち」という「フィロソフィー(哲学)」を全員が強く抱きして大切にしながら、その中心軸からぶれないようにみんなが心を寄せ合い、「いのち」の可能性を探求し表現し実現できる場。わたしたちは、生き続けている限り、生きることを自由に追求する場が必要であり、生きる全体的な営みを共有する場が必要です。
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失われた全体性を取り戻す営み
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