リアル授業ゼロ、友達ゼロ、バイトゼロ。今も授業再開の目処は立たず……コロナ大学生の悲惨な日常

コロナ大学生

小中高校は再開したのに、なぜ大学は通えない?

 SNSで「#大学生の日常も大事だ」のハッシュタグの投稿が話題となり、なかでも「小中高校や会社は行けるのに、なぜ大学だけ?」という不平等感に多くの共感の声が集まっていた。その理由を前出の石渡氏に聞いた。 「大学が再開しない理由は大きく3つあります。1つ目は規模の大きさ。大学は学生や職員など関わる人数の規模が大きいので、人の密集につながりやすい。2つ目は移動距離の長さ。地元に根づいている小中高校と違い、他県から電車で1~2時間かけて通う学生もいるので、感染拡大のリスクが高い。3つ目は学生の約半数が成人しているため、飲酒が可能であり、居酒屋など夜の街に出かける機会がある。これが企業であれば会食禁止などの指示に強制力がありますが、大学だと強制力があまり働かないからです」  また世間の一部からは「大学生のツラさなんて大したことがない」と悩みに理解を示さない人もいたが、その理由は何か? 「今でこそ大学はしっかり授業に出て勉強しなければ単位が取れませんが、2007年に大学設置基準の改正がされるまでは、授業なんて受けなくても単位が取れて卒業できる大学も多かった。つまり、それより前に大学を卒業した30代後半より上の世代にとっては、大学は遊ぶところという認識があり、今の大学生活とギャップが生まれているんです」  大学生から不満の声が上がるなか、コロナの対応を評価できる大学も存在する。 「岡山県の就実大学では、4月16日のかなり早い段階で全学生への一律支援金を決定しました。図書の宅配送料を負担する近畿大学もとても行き届いた対応でした。金銭的なフォロー以外にも、学生主催のイベントに学長が参加した甲南大学のように、大学が学生に寄り添っている姿勢が大事です」  大学と大学生を取り巻く環境がより良くなることを願うばかりだ。

コロナ対応力の高い大学

▼就実大学(岡山県) 4月16日、全学生への一律支援金を他大学よりいち早く決定。オンライン授業によるPCなどの情報機器や通信費等に必要と判断。金額は3万円。 ▼近畿大学(大阪府) 総額27億円というトップクラスの支援規模のほか、図書の宅配送料の負担やウェブ閲覧図書の拡大などの図書館サービス、オンライン診療などが充実。 ▼甲南大学(兵庫県) オンライン新入生交流会に学長が参加。「学生主催のイベントに学長が参加する例は珍しく、新入生に寄り添う姿勢を見せた模範にしたい例」(石渡氏)。 【石渡嶺司氏】 大学ジャーナリスト。大学生の教育、就活などに造詣が深く、『大学の学科図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)、『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)など著書も多数。 <取材・文/タカダ ツマミ具依 写真/朝日フォトアーカイブ> ※週刊SPA!9月1日発売号より
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表紙の人/ 今田美桜

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