ATMで出てくる「両替する/しない」どっちを選ぶべき?
バンコク銀行の画面。為替レートが出るので、その日のレートを把握して行けば、ConversionかWithout Conversionかを迷わない
日本のカードを使って海外のATMでキャッシングをする場合、先の利息のほかにいろいろな手数料がかかる。タイだと外国のカードに対しては
1回あたり220バーツの引き出し手数料を取られる。
およそ730円にもなるのでかなりの額だ。
さらに、ATMの画面操作の最後の方に
「両替をする(Conversion)」、「両替をしない(Without Conversion)」と問われることがタイでは多い。Conversionを選択してしまいそうだが、
正解は後者だ。
だいたいイエス・ノーで聞かれるので、ノーがWithout Conversionだ
通常、外国のカードでキャッシングすると、為替レートの確定は数日後。すると為替変動が激しい国だと損をする可能性が高くなる。これが為替リスクだ。
ここでConversionを押せば、その日その場で為替レートが確定する。その金額は画面に出てくるのでわかりやすい。そのため為替リスクは回避できる……はずなのだが、この「Conversion」時のレートは現地の銀行が設定している彼ら都合のレートなので、市中の両替所よりずっと悪いのだ。もちろん、「Without Conversion」なら為替リスク回避はできないのだが、少なくとも
タイではそれを考慮に入れてもWithout Conversionのほうが結果的によりお得なレートになることが多い。
筆者もタイのATMを使ってキャッシングしてみた。8月21日に1.7万バーツを引き出す。画面に出てきたレートは手数料220バーツ込み(つまり実際の引き落とし額は17,220バーツ)で63,634円。これをWithout Conversionで引き出し、すぐにカード会社に確認すると、引き落とし予定額は58,489円だった。カード会社のレートは1バーツあたり3.3966円で、ネット検索で見られる市場のレートは3.37円だったので、1バーツあたり2.66銭の手数料で済んだということになる。
これがConversionでは1バーツあたり3.6954円のレート。上記と比較すると1バーツあたり約30銭、1万バーツで3000円近くも手数料に差が出た。
そう考えると、
Without Conversionと繰り上げ返済を利用すれば、クレジットカードで現金紛失のリスクもなく、現地通貨を調達できる。とはいえ、今回は帰国できないことを前提に考えた場合なので、繰り越し返済は日本で対応してくれる家族などがいないとちょっと難しい。国際電話でカード会社に連絡もできるが、そうなると国際電話料金がついてしまうので意味がない。その場合はキャッシュカードを利用する。
キャッシュカードの券面裏にPLUSやCirrusなどのマークがあれば、現地の同様のマークがあるATMで現金を引き出せる。PLUSはVISA、Cirrusはマスターカードのグループで、現地通貨を引き出し、その場で日本の銀行口座から引き落とされるので使いすぎたり、利息の心配がいらない。
ある日に2万バーツを引き出したところ(実際には手数料プラスで20,220バーツ)、画面には716.26米ドルと表示された。なぜドル建てなのかはわからないが、当時のレートが108.08円だったので、日本円は77,413円ほど。これをWithout Conversionして実際に引き落とされたのは74,496円、1万バーツあたりで約1500円の差があった。
このようにクレジットカードやキャッシュカードの利用は案外に便利だ。ただ、注意したいのはATMそのものにスキミング装置が取り付けられていたり、カードが出てくる順番が違うことだ。
この画面が出てきたら、カードと現金の取り忘れに注意すること
タイでは現金が出てきたあとにカードが出てくる。日本のみずほ銀行だとカードが先で、現金取り出しは最後になる。この違いに慣れていないと、思わずカードを取り忘れる。タイでは海外カードが取り忘れでATMに吸い込まれると、銀行の基本ルールでは破棄処分になる。さすがにカードがないと現金引き出しは難しいので、そこだけは注意したい。
また、装置故障でATMに現金がないのに決済されてしまうこともある。さらに突如ATMが停止しカードが返ってこないトラブルもある。だから、一番いいのは、
銀行に併設されたATMを利用すること。なにかあってもすぐに確認・対応してもらえるからだ。これはタイに限らず、多くの国に共通する対処法だ。
<取材・文・写真/高田胤臣>