入管被収容者が新型コロナに感染。対策の甘い収容所ではクラスター発生の危険

クラスター発生の可能性がある収容所からの解放を

607筆の署名を入管総務課の職員に提出

「収容ではなく安心安全な暮らしを」有志メンバーが607筆の署名を入管総務課の職員に提出

 8月11日、支援団体SYI(収容者友人有志一同)主宰で急遽、炎天下の入管前で抗議行動が行われた。支援者たちの激励の声に反応して、収容施設から外に助けを求める悲痛の声が、いつもより激しく明確に聞こえてきた。  その後、SYIメンバーが総務課に以下のような申し入れ書を提出した。 ※   ※   ※  東京入管が新型コロナウイルス感染対策を軽視し収容継続を優先してきたことへの抗議  8月7日、東京入管は、被収容者の男性一名が新型コロナウイルスに感染したと発表した。細心の注意を払ってもコロナ感染を完全に防げるとは限らないので、感染を出したこと自体をやみくもに非難するつもりはない。  しかしながら、東京入管が今年4月以降、どのように収容および仮放免を運用してきたかを想起すれば、今回の感染は不可抗力などではなく、起こるべくして起きてしまった「人災」だと言わねばならない。  端的に言えば、これまでの東京入管の方針は、収容場において適切な感染対策をとっていると称しながら、実際には被収容者の人命を軽視し、収容継続を優先するものであったからである。  以上の前提から、東京入管の4月以降のコロナ感染対策怠慢とその帰結について、ここに抗議する。(後略) ※   ※   ※  SYIの行動に参加した「収容ではなく安心安全な暮らしを」という有志メンバーが、「クラスター発生の恐れがある入管収容所から被収容者を解放し、適切な対応と医療を!」という内容の署名を緊急に集め、607筆を提出した。  この署名を集めた彼女たちは「コロナが被収容者にまで感染してしまった事実を知り、いてもたってもいられなくなりました。何かしなければと思い、有志でネット署名を作成して3日で集めました」と語る。書名は今後も続けていき、いずれ法務省にも提出する予定とのこと。

女性被収容者に配布されるのは、1週間に紙マスク1枚だけ

密を防ぐために、距離をおいて抗議活動を行った

密を防ぐために、距離をおいて抗議活動を行った

 また同日、支援団体「freeushiku」のメンバーが、東京入管に収容されているトランスジェンダーのパトリックさんのために7月10日から集めだした署名17509筆を、新たな仮放免手続きの書類と共に、弁護士と一緒に6階の違反審査部門に提出した。 「ただでさえ収容の状態が劣悪なのに、パトさんはトランスジェンダーという理由で、特にひどい扱いを受けています」と、パトリックさんの支援者は訴える。 「22時間にわたって隔離され、フリータイムはわずか2時間、ほかの被収容者とは接触できません。しかし、彼女への支援は海外にも広がっています。カナダではトロントの日本領事館前で、カナダ在住の人たちがパトさん解放を求める抗議行動を行いました。一刻も早い解放を望みます」  現在収容されている女性はこう語った。 「女性ブロックでは、紙のマスクが1週間に1度だけ配布されます。『消毒液もほしい』と言ったら、『手を出して』と言われてそこに職員がワンプッシュするだけ。こんなのコロナ対策じゃない。女性はPCR検査を受けさせてもらえない。職員が外から出入りしているから、もしうつされたらと考えると怖い……。いま残っている人たちは、本当に帰れない事情がある人たち。どうか助けてほしいです」  それに対して、男性被収容者は頼めば1日1回マスクをもらえるらしい。この違いは何なのだろうか。男性のほうにコロナ感染者が出たためだろうか。といっても、女性たちにもさらなる配慮が必要なはずだ。 「収容」というストレスに、さらにコロナのストレスが加わり、被収容者たちの精神状態は極限を超えてしまっている。入管は対策をしっかり取れないのならば、これ以上コロナ感染者が増える前に一刻も早く解放すべきである。これは命にかかわる問題だ。 <文・写真/織田朝日>
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。
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