「オフライン学園祭中止、オンライン学園祭開催」は妥当か
取材を終え、前代未聞のオンライン学園祭を学生だけで運営すると決めた運営スタッフの覚悟には脱帽した。一方、具体的な内容やルールには未定の部分も多く、見切り発車との印象を持たれてしまうこともやむをえないだろう。各大学で次々とオンライン学園祭の開催が決定されているが、運営側は体裁の良い話だけでない、丁寧な事情説明と発信を行い、学生から理解を得られるように努めるべきだ。
盛り上がりに欠けるオンライン開催だとしても、学園祭は開催をしなければならない理由がある。学生文化の継承のためだ。コロナ禍でサークル活動や新歓活動が制限される中、大学の魅力の一つであった学生文化やサークル文化は危機にひんしている。その上、文化発表の大きな舞台である学園祭まで中止になれば、活動が止まったまま上級生が卒業してしまい、後輩にノウハウが継承されず立ちゆかなくなるサークルが出てくるのは想像に難くない。
しかし、就職活動の早期化・長期化でサークルの引退が早まっている事も相まって(サークルにもよるが、引退は大学3年生の夏ごろが多い)、短い期間で卒業する大学生たちの創るサークル文化はあっという間に崩壊する脆弱(ぜいじゃく)さを持ち合わせている。オンラインでも学園祭が開催されれば、サークル活動の活性化になるとともに、「学園祭に向けた準備のため」という大義名分のもと大学が活動制限を緩める理由にもなるだろう。
大学生である自分個人としても、例年通りの学園祭が出来ないのは非常に残念だ。しかし、このオンライン学園祭という初めての試みがサークル文化の灯火を繋げることを願う。
オンライン学園祭には、期待できることもある。この開催が学園祭のパラダイムシフトのきっかけになるかもしれないことだ。昔に比べ、大学の学園祭の自由度が下がり続けていたと感じている。大学自治がなくなったことの延長で、各地の学園祭は規制が増える傾向にある。
例えば、学園祭で飲酒ができる大学はほとんど無くなった。また、学園祭の企画がSNS上で批判を浴び中止に追い込まれる……なんてことも起こるようになった。福島さんが語ったように、オンライン学園祭で一度別のフォーマットが試されることで、時代に合った学園祭の形を再構築できるかもしれない。
そもそも、各大学が一斉に学園祭の開催を認めない方向で動いているが、その判断は妥当なのだろうか。Go Toキャンペーンが始まり、イベント規制の緩和が段階的に始まり、社会活動とのバランスを取りながらコロナと共存する方向で社会は動いている。
その中で、大学生の置かれている状況は厳しい。授業もオンラインで行われている上、サークルや部活動の活動制限は続き、「#大学生の日常も大事だ」という大学生活の回復を訴えるハッシュタグはTwitterのトレンドに入った。
実社会の自粛緩和に対し、通常の大学生活が許されないという不満が、オンライン学園祭への学生の冷ややかな反応の背景にあるとも感じる。学園祭に象徴される、課外活動も大学生の重要な学びと経験の一つだ。経済効果では表せないかもしれないが、大学生活の中で刺激を受け成長するという経験を特定の世代だけが失うことの社会的損失は大きい。
<取材・文/茂木響平>