日本の遅れた性教育は「人権意識の低さ」に原因あり! [令和の性教育]をマジメに考えた

令和の性教育

市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」が、厚労省に購入しやくするための意見書と署名を提出した。写真/朝日新聞社

 先日報じたように、新型コロナウイルスの流行で自粛期間が長期化。恋人との時間が増えて関係が密になり、望まぬ妊娠に悩む中高生が増えている。  そんな中、性交から72時間以内に服用すれば高確率で妊娠を防ぐことができるアフターピル(緊急避妊薬)を「薬局で買えるようにしてほしい」と、7月に市民団体が6万7000人分の署名を厚労省に提出した。多くの国ではすでに処方箋なしで購入できるのに対して日本は遅れている。また、性行為の同意能力があると見なす“性交同意年齢”も日本は13歳と先進諸国と比べて極めて低く、問題視されている。  このように性に関する話が話題になると、日本の性教育の遅れがより浮き彫りになってくる。一体、何がどのくらい遅れているのか。性の悩みや疑問をYouTubeで配信する助産師のシオリーヌ氏と、性にまつわる知識をプリントした“性教育トイレットペーパー”の開発者・鶴田七瀬氏に、性教育の問題点をズバリ聞いてみた。
令和の性教育

鶴田七瀬氏(左)とシオリーヌ氏

“性教育後進国”の日本が抱える問題点と闇

シオリーヌ:ぶっちゃけ、今の日本の性教育は重要なことを何も教えていない。大まかな教育内容を決める中学生の学習指導要領にも“性交”は記載されていないし、本当はすごく大切なはずのSEXをすっ飛ばして、受精して妊娠という内容が出てきちゃう。 鶴田:具体的な内容にはほとんど触れないよね。でも海外は真逆で、オランダやスウェーデンは小学生のうちから模型のペニスを使ってコンドームをつける授業があるし。 シオリーヌ:ピルや避妊も当然のように教えるし、すごく実践的。 鶴田:海外の性教育がすべて正しいというわけじゃないし、それぞれの国に合った教育方法なんだろうけど。ちなみにデンマークでは、アダルトビデオをみんなで見る授業があって、先生が生徒に、「こういう接し方をしたら痛い」ってレクチャーするの。オランダでは図書館に性教育のコーナーがあって、挿入している写真がモザイクなしで載ってるし。家庭での会話もすごくて「アナルSEXをするときもコンドームつけなきゃダメだぞ!」って父が娘に普通に言う。それで娘も軽く「オッケー、わかった~」みたいな(笑) シオリーヌ:どんな会話(笑)。日本との差がすごすぎる……。なんかさ、日本は他の国に比べて、“性”を過度にタブー視しているというか、“エロ”として捉えすぎている気がするんだよね。 鶴田:確かに。教育する側の大人もちゃんと教わってないからだと思う。子供時代に教育的な性に触れられずに、アダルトコンテンツに先に触れて“性は恥ずかしいもの”と思い込んじゃうというか。 シオリーヌ:前に性教育の講演で中学校に行ったとき、スライドに載せていたコンドームの写真をその学校の先生に「これ、どうにかイラストにできませんか?」と言われたこともあったなあ……。 鶴田:イラストと写真で何が変わるの?っていう(笑)。 シオリーヌ:ねえ(笑)。でも外部講師を呼んで講演会を企画するくらい性教育に熱心な学校もあれば、まったくそうでない学校もある。それは親も然りなわけで。

今の日本の性教育は「運ゲー」

鶴田:子供にとって今の日本の性教育は、“親ガチャ”や“学校ガチャ”ってくらい運ゲーな気がする。 シオリーヌ:そうだね。性教育が充実した国ではSEXや避妊、性感染症をすごく早い段階で授業の中で教えるけど、ひと昔前の日本は「教えなくても、そのうち自然に学ぶでしょ」的な感覚がすごく強かったんだと思う。友達同士で落ちているエロ本を見たり、先輩に教えてもらうとか。 鶴田:だからこそ先生も親も、今の子供たちに“時代に合った性教育”をどうやって教えていいのかわからない。それに「子供に間違った知識を教えてはいけない!」って思いすぎているような。性教育に予算が割かれないのも問題で。 シオリーヌ:私も90分性教育の講演をして、謝礼が図書カードということもあるし(笑)。 鶴田:あるあるだね。私の開発した男女の体のしくみや性的同意に関する知識が描かれている性教育トイレットペーパーも、まだ置いてくれる学校はほんと少なくて。100ロールで3万円。子供たちが人目を気にせずに、個室でじっくり性教育と向き合える。安いと思うんだけどなあ。 シオリーヌ:でも、積極的に性教育に取り組みたい先生がいても、指導方法を教わる場もあまりないし、予算が足りないから教科書通りのことを教えるしかないし……。う~ん、悪循環。 令和の性教育
次のページ 
日本の性教育が遅れている原因は“人権意識の低さ”
1
2
週刊SPA!8/25号(8/18発売)

表紙の人/ 奈緒

電子雑誌版も発売中!
詳細・購入はこちらから
※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める!
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会