<2020年版>終戦記念日に観てほしい第二次世界大戦を描いた映画5選
本日8月15日は終戦記念日である。ここでは、この日に観るにふさわしく、そして現代にも通ずる普遍的な問題も関わる、第二次世界大戦にまつわる出来事を描いた映画を、5作品に絞って紹介しよう。
1945年8月14日正午の会議から、翌日の15日正午に玉音放送がされるまでの24時間を追ったサスペンスドラマだ。圧倒されるのは、その“熱量”。登場人物たちの衣装や顔には汗がにじみ出ていて、口から唾を飛ばし、怒鳴りまくり、己の正当性を訴えるために奔走する。クーデターを起こそうとする青年将校、冷静ではいられなくなる政府高官たち、それぞれの思惑と行動は熱気に満ちている以上に狂気的でもある。
決定的な時間が差し迫っている中、巨大な問題に立ち向かい、火花を散らし合う極限状態の人間たちの姿は、エンターテインメントとして圧倒的に面白く、2時間半超えの上映時間であっても全く退屈することはない。歴史の裏にあった文字通りに命がけだった彼らの行動を追いながら、「一歩間違えば、この時に終戦を実現できなかったかもしれない」という“あり得た歴史”を考えてみるのもいいだろう。後の『シン・ゴジラ』(2016)にも強い影響を与えた、パワフルな映画の醍醐味を堪能できる名作中の名作である。
なお、本作はAmazonプライムビデオで現在見放題であり、同サービスでは同じく岡本喜八監督作品の『独立愚連隊』『独立愚連隊西へ』『殺人狂時代』『激動の昭和史 沖縄決戦』もラインナップに入っている。そちらも合わせて観てみるのも良いだろう。岡本監督の良い意味での極端でクセの強い作風、そして画面から伝わる熱気は、今観ても鮮烈なものとして映るはずだ。
こちらは現在劇場で公開中の映画であり、4月10日に亡くなった大林宣彦監督の遺作であると同時に、その集大成的な作品となっている。カラフルというよりもビビッドな配色、合成で作られた摩訶不思議な舞台、早いカット割りで怒涛の勢いのセリフと情報が繰り出されるといった独特すぎる作風は、大林監督作品を観たことがないという方にとって(観慣れている人でも)びっくりしてしまうことは必至だ。今回は劇中で「映画とはそもそも不自然なものなのだ」という言及すらあり、巨匠が最後に一切の遠慮をせずに、己の作家性を全開にした映画を作り上げたことがわかる。
物語は、閉館を目前にした映画館のオールナイト興行で“日本の戦争映画大特集”を観ていた3人の若者がスクリーンの世界に入ってしまい、戊辰戦争、日中戦争、沖縄戦、そして原爆投下前夜の広島など様々な戦地を体験するというもの。映画の中に入って冒険するのは『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993)のようであり、同じ俳優がそれぞれの時代で違う役を演じているのは『クラウド アトラス』(2012)のようでもある。戦争の愚かさや残酷性は、その戦争の歴史と共に進歩を続けていた映画でこそ表現し得るという、大林監督の矜持も感じさせる。
事実、大林監督は本作について「これはキネマ(映画)の持つ途方もない愉しさと、そこから学び得る歴史の悲しみを、我々の想像力によって無限に味わいつくそうと仕組まれた、超娯楽作の1本」であると語っている。出来上がったのは、約3時間という上映時間をたっぷりと使った、SFやミュージカルやラブストーリー、はたまたエロスやバイオレンスまで、様々なジャンルがミックスされた映画という娯楽の満漢全席、まさにタイトル通りの“キネマの玉手箱”のような内容だ。ぜひ映画館で、反戦と平和、矛盾に満ちた人間の悲喜劇もしっかり打ち出した、巨匠のラストメッセージを受け取ってほしい。
1:『日本のいちばん長い日』(1967)
2:『海辺の映画館 キネマの玉手箱』(2020)
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