ウォズニアック氏、GoogleとYouTubeを提訴。問われる巨大企業による「誤情報対策」の今後

自動化によるコスト削減と、個別のトラブルへの対応

 さて、話を戻そう。YouTube のような巨大プラットフォームでは、全ての投稿を人間の目で確認してから許可することは難しい。YouTube の取り組みのページの中から「安全性を高める」という箇所を見てみよう(参照:YouTube)。  ここでは「4つのR」がうたわれている。Remove(ポリシーに違反するコンテンツの削除)、Reduce(ガイドライン違反のボーダーライン上にあるコンテンツ拡散の減少)、Raise(信頼できるコンテンツ発見の促進)、Reward(信頼できるクリエイターへの報酬)である。  この安全性を高める取り組みの中に「有害なコンテンツの管理」と「誤情報への対抗策」がある。  「有害なコンテンツの管理」では、機械学習で大規模に検出したあと、人間によって審査されると書いてある。また、自動報告システムも利用していると説明がある(参照:YouTube)。  「誤情報への対抗策」では、判別は外部の審査チームや、機械学習システムによって行っていると記載がある(参照:YouTube)。ウォズニアック氏が訴えた詐欺動画は「誤情報への対抗策」が該当する。  実際に、どのような体制になっているのかは謎が多い。不適切動画については、薄給のワーカーが支えているという記事がある(参照:WIRED.jp)。全てを明らかにすることは、詐欺をおこなっている人たちに、攻撃に有用な情報を与えることになるので困難だろう。  YouTube が、人間と機械学習のどちらを重視するかは興味がある。YouTube は2020年3月16日に、新型コロナウイルスへの対策として、YouTubeに関連する社内スタッフの削減をブログで伝えた(参照:YouTube)。同社としては、機械学習をより重視する方に舵を切ったといえる。  自動化はより加速して、人間による関与は減っていくのだろう。その結果、ウォズニアック氏のようなケースが発生しても、機械的に判別することで何の対処もされないケースが増えていくのかもしれない。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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