時代遅れの“トンデモ校則”に翻弄される学校がある一方で、前出の須永氏は「校則がない、校則に縛られていない自由な校風の学校もある」と都内にある2校を紹介してくれた。
「
世田谷区立桜丘中学と千代田区立麴町中学がその代表的な学校で、両校とも校則のほとんどを撤廃しました」
なかでも桜丘中学の取り組みは非常に珍しい。
「頭髪の色や長さ、制服の着用は自由、スマホやタブレット端末の持ち込みも可能、チャイムも朝に一度鳴るだけ。遅刻や途中退席をしても注意されません。さらに、授業に参加したくない生徒は廊下で自習することも可能です。また、いち早く3Dプリンターや人型ロボットの導入をしているんです」(須永氏)
当初は校則を廃止して「社会規範の守れない生徒ばかりになったらどうする?」という保護者からの反対意見も多かったという。
「当時の校長・西郷孝彦氏が生徒たちの個性を伸ばすために校則撤廃の方針を貫いた。そのおかげで、荒れていた校内が一変。校内暴力やいじめ、非行は減少し、進学校への進学者数や平均学力が区の上位になった。近年では区域外から同中学に越境入学してくる生徒がいるほどです」同
また、千代田区立麴町中学も変わった取り組みを行っていると内田氏は言う。
「クラス担任制や宿題の提出、定期テストを完全廃止。生徒の自主性を重んじる教育を進めています。そもそも全国的にトップ進学校ほど校則が緩いと言っていい。ただ、それでもトラブルが少ないのは生徒自身の意識が高いから。桜丘中や麴町中は、東京都の中でも平均年収の高い家庭が多く住むエリアだからこそ成立したとも考えられる」
その上で「今後は東京以外の地方や中堅校でもこのような模範となる学校が出てくることが理想」と言う。校則に縛られない生徒たちが全国各地に増加することを期待したい。
東大進学者数ランキングで上位に入る筑波大学付属駒場高校の授業風景。制服がないことで有名でパーカなどのカジュアルな服装が目立つ
●須永祐慈氏:「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」発起人。同プロジェクトは、2017年に渡辺由美子氏、荻上チキ氏とともに発足された
●内田 良氏:名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)
<取材・文/瀬戸大希 写真/朝日新聞社>
※週刊SPA!8月4日発売号より