深刻な日本の人口減少問題とともに逼迫した労働力不足の問題。それを解消するために2018年10月、政府与党によって「出入国管理法改正案」が野党側の反発で紛糾する中、閣議決定。2019年4月に「改正出入国管理法」が施行されました。
新・在留資格は特定技能を2段階設け、14業種への特定技能1号での受け入れ人数を5年間で最大34万5150人と想定したものです。同時に「法務省入国管理局」が「出入国在留管理庁」へと改組されました。まさに外国人労働者の力をさらに借りる流れとなっているのです。
しかし、日本側の都合による受け入れ体制や厳しい労働条件・待遇問題などをめぐり「今後の外国人労働者の獲得はこれまで通りには行かない・維持出来ないのではないか?」という懸念がすでに各方面からあげられているのが現状です。
さらに、コロナ禍の影響で外国人労働者の雇用状況は現在とても厳しい状況となっています。帰国困難になる人や、急遽解雇されて泣く泣く帰国を強いられた人も少なくありません。
これまでの中国人やベトナム人から、本国の収入条件がより低いカンボジア人やラオス人などへと、日本側による外国人労働者のターゲットもシフトし始めています。
ここに見えるのは、変わらぬ日本側の都合による低賃金雇用条件、逆にアジア諸国の平均収入の上昇による日本への就労意欲の低下です。さらに人材の使い捨てへの反発。外国人労働者の中からは「我々は奴隷でもロボットでもない」という声が出ています。日本政府や各NPO団体もあらゆる支援に尽力していますが、まだまだ大きな改善が日本側には求められている状況と言えます。
そんな中、今年、20万人を超える在日日系ブラジル人社会が30周年を迎えました。さまざまな時代の変化の中で、最も長く日本の産業や社会を支えてきた彼ら。「30年の間に培ったノウハウと人間関係」は一朝一夕のものではありません。それは日本にとっても大きな財産と言えるでしょう。
一方、ブラジル本国だけでなく日本国内でも「日系ブラジル人」と一言でカテゴライズするほど単一的な状況ではなく、その内訳は千差万別と言えます。
ここで在日日系ブラジル人について、また「日伯関係史」について、改めてフェアな評価・注目をすることは日本にとっても有効かつ、今後への大きな鍵になるのではないでしょうか。30年の間、あまりにも日本人は在日日系ブラジル人との交流や理解・評価をしてきませんでした。
日本に住み、日本経済を30年に渡り支える貢献をしながらも、日本社会で孤立してきたと言える日系ブラジル人たち。一方で、彼らは日本人の外国人への苦手意識、外国語力の低さはもとより、より大切なコミュニケーション力やタフネスの低さ、国際感覚や実体験不足の欠如を補い、教えてくれる友人でもあります。
ブラジルに限らず「日系人」とは、100年以上前から国際社会に出て生き抜いて来た、いわば“厳しい状況下で国際化された日本人像”でもあるのです。
一方、日本のブラジルへの資源・食糧をはじめとした依存度が大きいことも見逃せません。ブラジル社会の各分野で活躍し、敬愛を集める偉大な日系人たちの歴史も、日本人はあまりにも知らない状況が続いています。
今後、日本が世界の中で生き抜いて行くためにも、ブラジルとの関係の強化、日系ブラジル人への評価・注目は、日本のライフラインの1つになるのではないでしょうか。
そして彼らとお互いに学び合い、長所・短所を補い合うことで、両国の将来を考えることができるのではないでしょうか。ブラジルの親日感情や、日本への敬意がまだあるうちに。
<文・写真/KTa☆brasil(ケイタブラジル) 資料協力/
JICA横浜「海外移住資料館」>