渋谷の宮下公園が「公立空中庭園『ミヤシタパーク』」に!「街・公園・商業施設の一体化」は新トレンドとなるか?

いよいよ地上4階の空中庭園へ!

階段とテラスからは渋谷の街を眺めることができる

階段とテラスからは渋谷の街を眺めることができる。それでは屋上へと向かおう。

 装いも新たになった「渋谷区立宮下公園」は建物の4階部分にあたり、営業時間は8:00~23:00。公園面積は約1万平方メートルにも及ぶ。  以前の鬱蒼とした樹木が生い茂る宮下公園とは打って変わって、開放的な芝生広場には多くのベンチが並ぶ。この芝生広場の広さは約1000平方メートルで、イベントの開催にも対応している。  広場の周囲には「ボルタリングウォール」、「スケート場」、「多目的コート」などのスポーツ施設が設けられている。これらのスポーツ施設の利用は9:00~22:00(受付は21:30まで)で、ボルタリング場とスケート場の利用料金は2時間1000円(小中学生480円)、渋谷区民は半額。ボルタリングなどは専門スタッフによって指導して貰うこともできる。
渋谷区立宮下公園の構成

渋谷区立宮下公園の構成(渋谷区ウェブサイトより)。

広々とした屋上の区立宮下公園

広々とした屋上の区立宮下公園。
スターバックスコーヒーが出店しており、ベンチも多く配置される。

 また、公園内にはスターバックスコーヒーが出店。渋谷駅チカに勤務している人は、行き交う電車を眺めながらスタバ片手に芝生広場でお弁当を広げるのもいいし、時間があればボルタリングで食後の運動…ということも可能だ。
ボルタリング施設

公園内に設けられたボルタリング施設。街並みを眺めながら運動も。

 公園内を見渡すと、フルフラットとなっており「重層化」していながらバリアフリーに配慮されていることがわかる。  なお、広場内にテントなど立体物の構築をおこなうことは禁止されているため、くれぐれも「ここをキャンプ地としよう」などとは思わないように。園内には渋谷のシンボルである「ハチ公」をモチーフとしたオブジェなども設けられており「映える写真」の撮影もできそうだ。
渋谷駅も一望

公園からは行き交う電車、そして渋谷駅も一望できる。

「街・公園・商業施設の一体化」が新トレンドに?

 さて、戦前に開設された当初の宮下公園は「渋谷」という「街の中にある公園」であった。しかし、近年の宮下公園は、下層階の殆どが駐車場となっていたため「街と分断された公園」になっており、フットサルなどの利用者以外にとっては馴染みが薄い存在となっていた。  今回の「さらなる重層化」により「街と分断された公園」はさらに街と分断されるかと思われたが、それは杞憂であった。
大階段

街・公園・商業施設を繋ぐシンボリックな大階段。

 先述したとおり、商業施設「レイヤードミヤシタパーク」の館内には比較的多くのテラスや階段が設けられていることが特徴だ。さらに、1階に設けられた「横丁」の雰囲気も相まって、ぶらりと「館内を街歩きの感覚でめぐり、近くにあるエスカレーターや階段を上っていくと公園に到達できる」仕組みとなっていた。
「屋台街」の横から屋上へ

「屋台街」の横から屋上へと行くことも可能だ。

 この仕組み、どこかで最近見かけたような……と考える間も無く、公園から周囲を見渡して気付いた。それはすぐ近くにある「渋谷パルコ」だ。  建替えにより昨年11月に新装開業した「渋谷パルコ」にはスペイン坂から屋上庭園まで続く大規模な「立体街路」が設けられていることが特徴で、上層階からも立体通路のテラスに出てぶらぶら歩いていると(エスカレーター併設)屋上庭園に辿りつく、という構造になっている。ハコ型の商業施設でわざわざテラスに出るなんて…と思うかも知れないが、渋谷パルコのテラスではミニライブやDJイベントなど様々なイベントが開かれていることもあり、訪問時には立体通路を行き交う客もいたほか、テラスや屋上は夜景を見て楽しむ人たちで賑わっていた。
渋谷パルコにも「立体街路」が張り巡らされている。

渋谷パルコにも「立体街路」が張り巡らされている。

渋谷パルコの屋上テラスからの夜景

渋谷パルコの屋上テラスは人気の夜景スポットとなった。

 かつて、全国各地の大型商業施設の多くが屋上遊園地や屋上庭園に力を入れており、これらは「市民の憩いの場」として親しまれていた。東京都心の百貨店などでは現在も「屋上庭園」として存続している例が比較的みられるが、全国的に見ると防災面の問題などもあって屋上に出られる商業施設は数が減っている。  しかし、新装なった宮下公園や渋谷パルコ以外にも、今年4月にはユニクロが横浜市に屋上公園と一体化した店舗「ユニクロパーク横浜ベイサイド」を開業させるなど、近年は「屋上の整備に力を入れる」どころか「街・公園・商業施設の一体化をおこない、公園自体を建物のアイデンティティとする」商業施設が増えてきている。
ユニクロパーク

公園とユニクロの店舗を一体化させた「ユニクロパーク」。
(ユニクロパークのウェブサイトより)

 一般的に大型商業施設は街に対して「内向き」になりがちであるが、今後は「街・公園・商業施設の一体化」をめざした「個性的な屋上」を持った商業施設が増えていくことになるかも知れない。もちろん、そのためには「人類が新型コロナウイルスに打ち勝ち、再び公園でくつろげる時代が来ること」が必須となるのだが――。
ソーシャルディスタンス

宮下公園内に設置された「ソーシャルディスタンス」の啓発表示。
公園で自由に遊べる日はいつになるのであろうか。

<取材・文・撮影/若杉優貴 ウラカシ(都市商業研究所)>
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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