保育園には大きく分けて認可保育園と認可外保育園の2種類がある。認可保育園は自治体からの手厚い補助金があるほか、園児の募集も経営者がする必要がない。経営が安定するメリットがあるものの、認可を取得するハードルは高い。
一方で認可外保育園の多くは自治体からの補助金はないが、規模も保育内容も事業者が自由に決められるメリットがある。認可受諾の難しさと保育内容から、東さんは認可外保育園を選択した。
また桜坂という立地は高級住宅地であり、所得が高い層が住むエリアだ。高所得者をターゲットにすることで比較的高額な保育料を設定し、経営の安定を図る考えだ。
具体的には、働く保育士に十分な額の給与を払うほか、最大で5人の子どもに1人の専属保育士を充て、きめ細かな保育を提供することや園内にカメラを設置して保育の様子を保護者に配信し、安心感を得てもらうといった施策を取り入れる。
日常保育以外には、英語やピアノ、プログラミングといった教育カリキュラムの導入を検討。桜坂周辺に住む保護者は保育園とは別にお子さんを習い事に通わせているケースが多く、保育園にてワンストップで保育と教育をできる環境を整備しようと考えた。
しかし東さんは保育園経営の経験は全くない。そのことについて東さんは、「たしかに私は保育園を経営したことはありません。その点には悩みましたが、まずは私が行動して保育園を作り、私の理念に共感していただける方に経営をお譲りしたいと考えています。
ただ現時点では誰も手を挙げていただけていないので、妻と私で経営をするつもりです。むしろ異業種出身だからこそ課題が見えやすいですし、できることがあると信じています」と話す。
新設の認可外保育園では園内カメラで保育の様子を配信するが、そのアプリ開発には莫大な費用がかかる。しかし東さんはシステム会社を経営しているため、自前で作れてしまうため、かなりのコストカットが可能だ。
東さんは今回の挑戦によって、認可外保育園の地位向上を目指したいと話す。
「現在は認可に落ちたからやむなく認可外に通わせるケースが目立ちます。しかし認可と違い、保育内容や開園時間を自由に決められるのは認可外ならではの良さです。こうしたことを多くの方に知ってもらいたいと思いました」
また目標を見事達成し、経営が起動に乗ると次のようなメリットがあると東さんは強調する。
「頑張りに見合った給与がもらえれば、保育士のモチベーションは上がります。保育業界では人材不足ですが、それは労働環境に課題を抱えているからだと私は感じています。仕事に強いやりがいを感じる保育士が増えれば、自分も保育士になりたいと思う人の数も多くなるはずです。それに自分の労働環境や報酬に満足していれば、保育の質は自然と上がります」
また保護者としても保育と習い事を別々にするより、ワンストップで両方を受けられる方が送迎の手間が減るメリットもある。
「認可外保育園の経営者は、規制は多いが補助がある認可保育園を目指すか、融資を受けながら延命するかという選択肢を取ることが多いです。しかし私が今回の挑戦で成功すれば、認可外保育園の経営モデルとして類似のチャレンジをする方が出てくるのではないかと思っています」と東さんは意気込みを語ってくれた。
<取材・文/薗部雄一>