映画『グレース・オブ・ゴッド』は対岸の火事ではない。性虐待は日本の仏教者や占い師にも

日本の宗教的性犯罪の温床は「祈祷・占い」

 性犯罪は多いものの宗教的文脈がほとんどない仏教者に対して、「祈祷・占い」では、宗教行為そのものが性犯罪につながっている。31件中27件(87.1%)がインドア事件で、この割合は僅差とは言えキリスト教より高い。  個人面談を基本とする祈祷や占いでは、宗教者が相談者と密室で2人きりになることが多い。性犯罪者にとって好都合な場だ。  古い話だが昭和5年にも、「高島易者」を名乗る占い師が女性相談者をレイプした事件をきっかけに、法外な見料を取る占い師も含めた「不良易業者」の一斉検挙が都内で行われたことがある。この年だけで165件もの検挙や指導が行われたという(『易学研究』1956年1月号)。  祈祷や占いを本格的に生業にしているわけでもない人物が、女性を連れ込む口実として祈祷や占いを称するケースすらありそうだ。新聞報道では「除霊と称して」「祈祷を装って」という類の表現がしばしば見られる。  こんな特殊な事例もあった。〈池袋「JKコミュ」摘発 容疑の31歳元店長逮捕 「裏オプション」横行〉(産経新聞2015.10.01)など、いわゆる「JK(女子高生)ビジネス」の業者摘発に関する報道だ。  表向きは、女子高生とおしゃべりをする等のサービスを標榜する店舗で、「裏メニュー」として女子高生による性的サービスがあったというものだ。取り締まりを避けるために「JK占い」と称する店舗を構える例も現れており(朝日新聞2014.09.27より)、摘発された業者も「占い」を売りにしていたという。  未成年者が「占い」に釣られて性犯罪の被害にあうのとは違い、実質的には宗教性があるとは言いにくい。宗教者による性犯罪でもなさそうだ。しかし「占い」を性犯罪の隠れ蓑にできると考える人間が実際に存在していることを示す事例だろう。

宗教者の社会的ペナルティ事情

 祈祷や占いは個人事業として行われているケースも多い。事件化しても組織による処分や非難はない。もともと芸名で活動しているケースも珍しくはなく、本名を報道されても有罪判決を受けても活動再開は難しくない。今回調べた新聞報道では、性犯罪で複数回逮捕されている占い師もいた。  仏教者や神職が容疑者となった事件では、東大寺の事件のように有名寺社の聖職者・役職者が辞任したケースはある。しかし同時に、性犯罪で逮捕された副住職が後年、別の性犯罪で再び逮捕された際にも「副住職」のままだったケースもある。その他にも、報道された容疑者名でネットを検索してみると、いまだに住職を務めていると思われるケースが複数あった。  寺の住職は基本的に世襲であり、人事権は宗派より寺(先代の住職)にあることが多い。東大寺のように寺単体が組織化されている大規模寺院はともかく、小規模寺院は事実上、住職の個人経営状態にある。  こうした状況にある寺や、そもそも宗派等による拘束がない個人経営の祈祷・占いでは、教会組織が性犯罪神父を他の教区に異動させることでうやむやにするというカトリック的な隠蔽手法はとりにくい。ところが、隠蔽できず職を失うとは限らず、むしろ「発覚したとしても失職しない」ことすらあるのが、日本の宗教の実情だ。  神職(神道)では9件全てについて、容疑者の進退にかかわる情報は得られなかった。  次回は、映画『グレース・オブ・ゴッド』は対岸の火事ではない現実として、日本でも起きているキリスト者の性犯罪について取り上げる。 <取材・文/藤倉善郎>  
ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)
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