繁忙期なのに街がガラ空き。感染者再増加のスぺイン第3の都市バレンシア、衝撃の光景

封鎖解除の気の緩みで一気に「再増加」

大聖堂近くの土産物屋も閉まっている

大聖堂近くの土産物屋も閉まっている

 そもそも新規の感染者が発生した要因とは何か? スペインでもそれが若者による夜遊びを対象にした場所での発生だということが言われている。ナイトクラブやパブ、ボテリョン(若者が広場にたむろしての飲み会)などがそれだ。これらの場所は、マスクも着用せずにお互いに近距離で話し声も高くなりウイルスにとっては最高の活動の場だという。3か月の封鎖で閉じ込められていた若者の多くは封鎖解除となって一挙に解放されて夜遊びの場所を求めたということである。  その結果、それまでの感染者の平均年齢が61歳から62歳であったのが、若い世代で感染者が急増したことによって感染者の全体的な平均年齢が45歳まで下がった。(参照:「El Confidencial」)  そのため、再度ロックダウン初期の段階にまで逆戻りする地域が出始めている。バレンシア州とアンダルシア州の中間に位置しているムルシア州の人口3万2000人のトタナ市では今月23日から封鎖の最初のステップ段階まで逆戻りすることが同自治体で決められた。不要不急の外出が禁止されたのである。店は閉店を余儀なくさせられ、外出は食料の買い出しなどだけとなった。(参照:「ABC」)  また、バレンシア州のバレンシア市から沿岸沿いに70キロ西南の方に向かったリゾート地ガンディア市でもクラブの営業は閉鎖され、パブやバルも営業は夜10時までということが自治体で決められた。(参照:「ABC」)  こうしたナイトライフをエンジョイできる場所がスペインには7万5000カ所あるとされている。この分野で雇用されている人は30万人。デスコティックなどが営業を停止させられるようになると、今年末までに60%から80%は廃業するようになると指摘されている。(参照:「El Pais」)

感染拡大防止体制の不備

 ただ、スペインでコロナ感染を防ぐ為に一番不足しているのは感染の追跡を行う調査員の不足である。現状のスペインでは1万2000人当たり一人の調査員という非常にみすぼらしい数になっている。これでは感染拡大を防止するのは不可能である。現在、この調査員を増やしているが、それが順調に進んでも5500人当たり一人の調査員まで増やせるのが現状だと推測されている。例えば、ドイツでは4000人当たり一人の調査員となっている。  特に、問題となっているカタルーニャでは3万人につきひとりの調査員というレベルでしかない。マドリードでも同様にレベルである。スペインの大都市で一人当たりの調査員で対象になる人口が少ないのはバレンシア州である。同州では4000人につき一人の調査員となっている。しかし、バレンシア州の人口500万人とほぼ同等のスコットランドでは一人当たりの調査員は2000人が対象となっている。(参照:「El Pais」)  同様のことはマドリード州でも指摘されている。調査員が人口の割に非常に少ないということだ。マドリード州政府は5000万ユーロ(60億円)を投入してパンデミックに十分対処できる病院の建設をする予定であるという。しかし、それだけの投資をする前に調査員を増やすことだ。  スペインでも今年10月ころには第二波が押し寄せて来ると懸念されている。現在取り組んでいる状態では第二波に対抗できるための体制になっていないのが十分に判断される。しかし、一部の人間達の間にコロナ感染の恐ろしさへの認識が欠けているのは明らかである。それがスペイン全体にマイナス影響を及ぼすようになる。実際、コロナ感染を軽く見ている連中の意識の浅さによってスペインの今年下半期の景気回復の道は完全に断たれた。残念である。 <取材・文・撮影/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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