「加害者はあなた」世界中で見られた性暴力啓発ダンスを作ったグループが警察に訴えられる

El Violador En Tu Camino

日本でも行われた「El Violador En Tu Camino(加害者はあなた)」の行動 (photo by Kentaro Kajitani)

 黒い洋服に目隠し、緑のバンダナをした性暴力を啓発するダンスを見たことあるでしょうか。  これは南米のチリを拠点とする、フェミニストのグループであるLas Tesisが作った「加害者はあなた」というダンスです。このダンスが国境、大陸を越え世界中で行われているのです。  ただ、先月末、Las Tesisはチリの警察に起訴をされてしまいました。

Las Tesisの歌のオリジン

 2019年の10月、チリで公共交通機関の値上げが促されました。それを機にチリ全土で莫大のデモが広がり、チリにおける様々な格差、SENAME(児童保護・児童養護施設に似たもの)による児童の虐待、チリにおける女性に対する殺害(フェミサイド)や性暴力、水道水の民営化の廃止、保険制度の改善や年金制度の見直し、そして警察の暴力について人々が声をあげ始めたことは、以前記事として執筆しました。  その一方でフェミニストのグループであるLas Tesisが、若い女性などを集め、「El Violador En Tu Camino」を披露したのです。それが、世界中で流れた「加害者は貴方」と訴えるダンスでした。  この「El Violador En Tu Camino(通り道の加害者)」には、オリジンとなったものがあります。  それは、1990年代にチリの警察(Carabineros De Chile)が作った、 “Un Amigo en Tu Camino(通り道の友達)”というスローガンでした。独裁者政権直後、チリの警察や軍人は独裁者政権中の不当な暴力、そして市民の暴行により一般的なイメージが大変低かったのです。そのイメージを改善するために作り上げられたスローガンが、「通り道の友達」でした。つまりそれは警察のイメージを改善し、人々の信用を得るものだったのです。  ただチリの警察にや軍人による暴力、不当な権力の使用は独裁者政権が終わってからも批判を浴び続けています。一般的、特に政治的にリベラルな人は、警察に対して悪いイメージを抱いている人がいまだにたくさんいます。  去年のデモ中にも、警察や軍人は催涙ガスやペッパースプレーを使いました。このことは、チリの国内人権委員や国連からも勧告を受けいます。  Las TesisはこのEl Violador en Caminoを通し「友達」と名乗る警察を告発しているわけです。

「フェミサイド」とはなんなのか?

 このEl Violador En Tu Caminoはチリ、そして世界に存在する女性に対する暴力、性暴力、そして女性の殺害(フェミサイド)について話されています。  フェミサイドの概念自体は日本ではあまり話されていませんが、フェミサイドというのは、「女性の殺害」を意味しています。  WHOが出した女性に対する暴力のレポートを見てみると、このように書いてあります。 ”Violence against women comprises a wide range of acts – from verbal harrasment and other forms of emotional abuse, to daily physical or sexual abuse. At the far end of the spectrum is femicide: the murder of a woman . While our understanding of femicide is limited, we know that a large proportion of femicides are of women in violent relationships, and are committed by current or former partners.” (筆者訳:”女性に対する暴力は幅広く存在するーこう当のハラスメントからその他精神的な暴力、家庭内暴力や身体的な暴力、そして性暴力。そのスペクトラムの一番恥にあるものがフェミサイド:女性の殺害である。 フェミサイドの知識は限られているが、フェミサイドの多くは暴力的な関係から来ており、過去や現在のパートナーにより殺害されることが多い”)  チリや南米なんかではフェミサイドが多く語られています。3月8日の国際女性デーのデモなどでも、多くの被害者の名前などを出して「忘れないように」と被害者の家族や友達が訴える様子も見られれますし、「Para Todas Las Chicas que pueden estar aqui」(ここに入れないすべての女の子のために)とフェミサイドをこれ以上許さない社会を訴える人もたくさんいます。 「#NiUnaMenos」(直訳が難しいが、誰一人もう犠牲者を出さないように、と啓発する運動)も同じようにフェミサイドをなくすために南米で始まり、スローガンとして使われています。  最近は性暴力による自殺もフェミサイドとしてみるべきなのか、と議論も行われています。
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2019年のデモ時、横行した警察による性暴力
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