同様にスペインの元判事バルタサル・ガルソンとも契約して米国への送還を阻止すべく既に400万ドル(4億3200万円)を前金として支払ったという。ガルソンはハーグの国際裁判所に今回の逮捕は違法であるという訴えをする意向だ。(参照:「
El Tiempo」、「
El Tiempo」)
ガルソン判事はスペインのテロリスト「エタ」の犯罪取締まりで積極的に活動したことで名声を博すことになった。また彼を国際舞台で一躍著名にさせたのは1998年にチリのアウグスト・ピノチェト元大統領に対して、彼のチリでの弾圧の影響でスペイン人が現地で拘束されて殺害されたということで彼に逮捕状を出してスペインへの送還を要求した。スペインで裁くためであった。英国で療養していたピノチェのスペインへの送還を要求した。英国政府はそれを拒否した。
国際犯罪に対しては、普遍的に司法権を行使できる権利をがルソン判事は適用したのである。今ではスペインは法改正によってこの普遍性による追跡はできないことになっている。このような要請をしたのは当時珍しい出来事で世界的に注目を集めた。この出来事がその後のアルゼンチンで軍事政権での軍人指導者を裁く引き金になった。
ガルソン判事はフランコ体制下で共和制支持者や左派系の人物を銃殺したりしていることの調査を開始した。それはスペインの内戦時代の犯罪は問わないといする恩赦法に違反するとされていた。その一方で、失踪者をもっている家族にとっては彼の決断は歓迎された。しかし、彼のこのような規制を破る行動に法曹界では反発する動きが生まれていた。最終的に彼の公判にもっていくまでの調査のやり方に合法性に欠けるということが問われるようになっていた。結局、法曹界を支配している右派系の判事らによって彼は法曹界から追放された。それ以後、彼は国際的に弁護士として活躍するようになっている。現在ウィキーリクスの創業者アサンジの弁護も務めている。
その一方で、サーブ自身は内心米国への送還は現実のものとなると見て、彼が関係していたマドゥロとその関係者らの名前などを明らかにして協力する用意があることを米国側に伝えて刑の軽減を要求しているという。恐らく、マドゥロも今となっては危険人物だとみなし彼の命を狙っているとサーブは考えるようになっているようだ。
<文/白石和幸>