九州豪雨で死者60人超、136万人に避難指示。「50年に一度」レベルはもはや珍しくない!

[夏の自然災害]警報

7月4日の昼頃、球磨川の氾濫により冠水してしまった熊本県人吉市街地の惨状。今年も水害は繰り返されるのだろうか 写真/朝日フォトアーカイブ

 ここ数年、毎年のように甚大な被害をもたらしている自然災害。コロナ禍で避難リスクも高まる中、特に被害が集中する夏を迎える。果たして、自然の驚異の前に注意すべき点はあるのか。

50年に一度レベル以上の災害が今夏も日本全土に

「今まで大丈夫だったというのが通用しないことを肝に銘じてほしい」  地域防災を専門とする山梨大学大学院准教授の秦康範氏がこう話すように、球磨川や川辺川が氾濫し50人以上の死者を出した熊本県を始め、全国11県に大きな爪痕を残している「令和2年7月豪雨災害」は、改めて我々に自然災害の脅威を見せつけた。この原稿を書いている7月10日時点でも予断を許さない状況が続いているが、ここ数年間、「何十年に一度」レベルの災害が夏のシーズンを狙い撃ちするかのように集中的に起きている。 「’13年から運用の始まった『大雨特別警報』は50年に一度あるかないかというレベルを超える大雨が長時間続くようなときに出るもので、本来ならば滅多にないものなんですよ。運用から7年の間に4回出ているのが福岡と長崎。3回が佐賀と沖縄。2回が計6府県。1回が計22都県と北海道の計3地方(7月10日現在)。つまり、ここ数年は明らかに雨の降り方が変わってきているのです」(秦氏)  今回の豪雨災害においても複数回の大雨特別警報が出されており、もはや特別なアラートとは言い難い状況となっている。
[夏の自然災害]警報

浸水想定区域

防災のためには「危険地帯に住む人を減らすしかない」

 そもそも都道府県が管理している河川のダムや堤防は50年に一度レベルの大雨が来ても大丈夫な造りにしているのだが、そのレベルを毎年、毎夏、超えてくるのだから、大災害が繰り返されるのは当然だ。 「WMO(世界気象機関)は今年の夏も北半球では記録的な暑さが予想されると言っていますから、猛暑になるでしょう。海水面の温度が上がれば湿った空気が立ちのぼり、台風や線状降水帯の発生を促します。昨年、千葉を襲った台風15号レベルのものが今までほとんど上陸したことのない東北や北海道を直撃することも考えられるのです。今まで大丈夫だったからという常識は通用しない」(同)  では、今まで災害の少なかった地域のダムや堤防をより強固なものにしなくてはならないのかというと、それには膨大な時間と莫大なお金が必要となる。ならば人を動かすしか手立てはないという。 「人口増加による居住地区拡大により、国や都道府県が指定した河川の洪水による浸水想定区域に住む人と世帯は毎年増加しています。これを減らすしかない」(同)

’15年改正の水防法に基づいて想定しうる最大規模降雨による浸水想定区域図と’95~’15年の国勢調査に基づく区域内人口と世帯の割合。一貫して増加している

 今後も毎年、毎夏、来るであろう集中豪雨被害を減らすには危険なエリアを避ける居住誘導と土地利用制限を早急に進めるべきだ。
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