「実務担当は素人が大半」持続化給付金の危ない審査現場
参院経済産業委員会で答弁する、梶山弘志経済産業相。電通への不透明な外注システムが問題視されている 写真/時事通信社
制度の網目をかいくぐるかのように続出する持続化給付金の不正受給。申請審査の段階で、不正を洗い出せないものなのか……。
しかし、6月11日付の東京新聞が報じた記事を読めば、その期待が持てないだろうことは明らかだ。以下にその一部を引用する。
「審査を担当する人たちは複数の派遣会社に所属している。勤務は昼と夜に分かれ、時給は千~二千円台。(中略)豊島区の(審査)拠点で働く女性は、登録先の派遣会社から案内を受けて五月中旬から審査業務にあたっている。『経理の用語も何も分からない素人が大半で、本当に大丈夫なのか』と話し『罪悪感』すらあるという。申請数に応じて審査基準が変わり、現場は常に混乱していると明かす。審査に必要な書類の画像が不明瞭な場合など、『SV』と呼ばれる上の立場にあたるスーパーバイザーに判断を仰ぐも、彼らも派遣で分からない場合が多い。『チラシの裏やふせんに走り書きしたような記録が通った時は驚いた』という」
こうした状況で、現時点で200万件に上る申請書類をくまなく精査できるとは到底思えない。前出の松嶋氏はこう提言する。
「納税者に寄り添って仕事をする税理士の立場からすれば、税金を原資とする持続化給付金の不正受給は徹底的に告発してもらいたい。しかし現実的な問題は、経産省にチェック能力がないこと。頼みの綱は国税庁ですが、経産省とは仲が悪いので不正の抑止力になりえていません。ただ、この非常事態にそんなことは言ってられない。調査官を申請審査の現場に派遣するなど、国税と経産省は協力するべき。新型コロナの感染を避けるため、国税による新規の税務調査はストップしているので、調査官は暇なはずですし」
持続化給付金事業で経産省と国税庁が手を結んだというニュースだけでも、不正受給を躊躇させる一定のインパクトがありそうなのだが……。
【奥窪優木氏】
フリーライター。上智大学経済学部卒業。国内の社会問題から世界のゲテモノ食事情まで自らの興味の赴くままに取材
【松嶋 洋氏】
税理士。東京大学卒。国税調査官を経て現職。近著に「それでも税務署が怖ければ賢い戦い方を学びなさい」(金融ブックス)
<取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社>