万引きGメンが声をかけずに犯人に犯行を思いとどまらせるためにすることとは?

私服保安員と潜在的万引き犯の心理的攻防戦

「しかし、今回の彼女の場合、彼女は警戒を解いておらず、まだギリギリ防止できるチャンスがありました。私は牽制をかけるために、わざと彼女の顔や商品の入っているバックを凝視して腕を組んだ状態で彼女から私が見える少し離れた位置に立ちました」  こちらが犯行を見ていたことを対象者に伝えるため顔とバックを凝視するとのことです。万引き犯は他人の目の動きに敏感なため、眉間にしわを寄せ怒りを表現し、目を見開き相手をしっかり見ていることが伝わるように意識的に表情をつくり、相手を見るそうです。  また、腕を組むのは、店舗敷地内から出られないように、「出たら捕まえる」という心理的な圧力を対象者にかける為に行うと説明して下さいました。 「この状態で微妙に距離をとりつつ相手に視線を向けたまま、相手がどう行動に出るのか様子を見ながら待ちます。微妙に距離をとるのは相手からのクレームを避ける為と、距離をとり、ある程度相手に自由を与えなければ万引きした商品をバックから出すことができないからです。相手との距離は心理的圧力のバロメーターのようなもので、より強く心理的圧力を与えたい場合は相手に近づきます。逆に心理的圧力を弱めたい場合は離れる、というように距離を調整しながら、クレームにならないギリギリのラインで心理的な圧力をかけていき、バックから商品を出すように仕向けていきます」  冒頭でRさんは、「万引きを防止するには心理的圧迫を絶妙な加減で行う」という発言をされていましたが、万引き犯のノンバーバル行動を観察しながら、自身のノンバーバル行動も適切にコントロールするという、高度なノンバーバルの観察スキルと伝達力が求められることがわかります。  次回、この万引き犯がどうなったのか、そして心理的圧迫を与えると万引き犯はどんなノンバーバルサインを発するのか、Rさんにお話し頂きます。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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